「チェシャ猫からのエロとサスペンスへのお誘い」
「兄ちゃーん、お客さんだよ」
夕食後、自分の房で図書室で借りて来た本を読んでいるとハイジが顔を出した。
「ワンやシンとトレーニングルームに行ってたんじゃなかったのか?」
「うん、行ってきたよ。2人ともまだ腕立てやってるんじゃないかな。2人とも負けず嫌いだから」
タオルで汗を拭いながら涼しい顔でそう言うハイジに急かされるように俺はネバーランドの入り口まで連れて行かれる。
「本当に俺なのか?」
自分に客が来る事は珍しい事なのでハイジにそう確認すると、ハイジに間違いなく兄ちゃんだよ、と言われた。
「早く行かないときっとベリーズ困ってるよ」
ハイジのその言葉の意味は直ぐにわかった。
「こんばんはぁ、お兄ちゃん」
ベリーズを腕置きにしながらふにゃりと微笑む人物を確認して一気に脱力してしまう。
「…客ってお前か」
「うわー、何そのリアクション。もうちょっとどうにかならねーの?」
取り合えず半泣きになっているベリーズを救出してやりながらチェシャ猫に用件を尋ねる。
「一緒にお風呂でもどうかなって思ってさぁ」
「風呂?…お前とか?」
「何か問題が?」
淀んだ空気を間に挟んでチェシャ猫と視線を絡ませていると、救済活動に行っていたエドアンが戻って来た。
エドアンはチェシャ猫の姿を確認するとギョッとしたように目を見開き、俺に詰め寄ってくる。
「何かあったのかクララっ、誰かコイツを怒らせた奴が居るのかっ?」
「別に問題は何も起きてねぇよ。コイツはただ俺を風呂に誘っているだけだ」
一応チェシャ猫の名誉を守る為にそう説明すると、エドアンの表情が曇った。
「…もっと問題じゃねぇか」
「何だよ、どうかしたのか?」
俺を後ろからキツく抱きしめチェシャ猫を睨みつけるエドアンの行動に疑問を感じつつ、珍しく怒りの感情を表に出しているエドアンを落ち着かせようと、俺は首元に回ったエドアンの腕を上から優しくさする。
「俺とお風呂に行くと貸し切りだからゆっくりできるよ?何でか知らねーけど」
「貸し切り…」
貸し切りと言う言葉に心を動かされる。
「うん。お兄ちゃんと俺の2人っきり〜」
「駄目だ。そんなのは認めねぇ。行くなクララ」
俺の顔を横から覗き込みながら険しい顔をしているエドアンを相変わらず心配性な奴だなぁと思いつつ、俺はチェシャ猫と2人きりで風呂に入っている所を想像してみた。
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