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強制はしたくなかった。

俺の経験上、怖いものから目を背けている内はずっと怖いものから逃げられない。

怖いものを何とかするには、嫌って言う程に怖いものと向き合って戦って打ち勝つしかない。

だからお願いゼロ、自分の足で俺の所に来て。

じゃないと、俺にはどうすることも出来ないよ。

一人で戦うのって、凄く怖くて、不安で、凄く大変で、とっても疲れるんだ。

俺には無理だったよ。あんな孤独と一人で戦うことは。兄ちゃんが居なかったら、絶対に戦うことが出来なかった。打ち勝つことなんて出来なかった。

時々考える。

あんな孤独と、いや、きっと俺のとは比べものにならない。

俺が想像することが出来ないくらいの孤独と、兄ちゃんはいつもずっと一人で戦ってる。

そして、一人で戦って乗り越えて行く。

そしてまた戦うんだ。

その事を考えると、なぜか涙がでる。

どうやってその永遠に続く真っ暗なループから兄ちゃんを救い出せるのかがわからない。


「ハイジ…」

ゼロに呼ばれ顔を上げると、そこには表情を固くするゼロの姿があった。

恐る恐る伸ばされるゼロの腕を俺はしっかりと掴む。

「ハイジ、俺を助けてくれ」

「うん」

「目の前が真っ暗で、もう…どうしていいか、わからねぇんだ」

一歩を踏み出してくれたゼロに、心が温かくなる。

俺はゼロの腕を引っ張り、ゼロを強く抱きしめた。

「大丈夫。俺が道しるべになるよ」

本当は自信なんてない。

だけど、こんなことで俺の宝物を奪われたくないんだ。

兄ちゃんは、孤独と戦いながら俺に有りったけの愛情をくれる。

俺は自分のことでいっぱいいっぱいなのに、いつも上手く兄ちゃんに愛情を返すことが出来ないのに。

愛情を知らずに育った兄ちゃんが、どうして俺に愛情を与えることができるんだろうって不思議に思ってた。

だけど次第に、もしかしたら兄ちゃんが俺にくれる愛情は兄ちゃんが欲しかったものなのかもしれないって考えるようになった。

兄ちゃんは、自分に与えられなかったものを人に与えることができる。

俺、それって凄いことだと思うんだ。

だから俺も、兄ちゃんみたいに人に愛情を与えられる人間になりたいんだ。



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あきゅろす。
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