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「あっ…あ…なっ何でだよ、何で、何で震えてんだよっ!止まれ、止まれよ…っ」
俺の手を振り払い、必死で手の震えを止めようと押さえ付けるゼロが、恐怖に捕われているのは明らかだった。
「何でもない、こんなこと位何でもない。いつかはこうなるってわかってた、たいしたことない、もっと酷い目に会った奴だっているんだ。それに比べたら何てことねぇ」
必死に自分に言い聞かせるゼロの姿を見ていられなかった。
「止まれ、止まれよ…頼むからっ…。これじゃまるで、本当に俺があいつらに汚されたみたいじゃねぇか。俺は女じゃねぇっ、別にあいつらにレイプされた所で傷つかねぇ」
言葉とは裏腹にボロボロと涙がこぼれ落ち、体の震えは止まるどころか酷くなっている。
「ゼロ、ネバーランドに帰ろ。俺達の部屋に戻ろ」
俺がそう言うと、ゼロは縋るように俺の顔を見返した。
「こんな所に居たって意味ない。今すぐ俺がゼロを浄化してあげる」
ゼロの腕を引っ張り、立たせようとする俺にゼロは言葉にならない声を漏らす。
「ハ…ハイジっ、無理だって俺…」
「何が無理なんだよ」
「本当に俺、まだ駄目だって…今は無理だっ」
「じゃあゼロはずっとこのままで居るの?怖い思いを一人でして、苦しむの?ゼロは一人で乗り越えられるの?」
「それは…」
俺は言葉に詰まるゼロの腕を引き、足を進める。
「俺は耐えられない」
「何が…だよ、何が耐えられないんだよ?」
「ゼロの頭の中をあいつらに支配されるのが許せない。ゼロはもう俺のもの何だから、俺のことだけを考えてなきゃ駄目なんだよ」
「ハイジ、だけど俺……怖いんだよ…っ」
俺の腕を掴んで、心の内を偽らずに訴えてくるゼロが余りにも怯えていて、小百合に対する怒りが沸き上がってくる。
俺は立ち止まり、ゼロと向き合う。
そして一度ゼロの腕を掴んでいた手を離し、再びゼロの前に腕を差し出した。
「ゼロの怖いの、俺にも分けてよ。一人だったら怖いけど、二人ならきっと怖くないよ。
ゼロは一生懸命、俺に愛情をくれた。だから今度は俺の番だ。
おいでゼロ。俺がゼロの怖いもの全部忘れさせてあげる。
怖いこと考える隙間がないくらいに、俺でいっぱいにしてあげる」
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