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「ハイジ」

「うん」

「俺、お前が欲しいんだ」

「うん」

「俺だけのものになれよハイジ。そして俺をお前だけのものにしろ」

「うん」

「もう、他の奴にキスとかすんな。触らせるな」

「うん」

「ずっと、俺の側にいろよ」

「…うん。いいよ」

俺の背中にしがみつくように抱き着いて、ゼロは泣きながら訴えてくる。

そのゼロの姿は、まるでもう俺なしでは生きられないと言っているようで痛々しくもあり、愛しく見えた。

俺を見つめるゼロの瞳にはもう迷いが消えていて、一気に体の力が抜けた。

絶対にやっぱり無理だって言われると思っていたから。

もともと俺に、ゼロの気持ちを拒絶するなんて言う選択肢はなかった。

ゼロがくれる、時々殺されるんじゃないかって思うくらいの愛情が嬉しくて仕方がなかった。

「ゼロ、俺が逃げたくても逃げられないくらいに、もっともっと俺を縛りつけて。

俺が不安になる隙がないくらいに俺を満たして」

俺がそう言うと、ゼロは顔をしかめた。

「…お前、そんな趣味があったのか?」

「え…?何が?」

「…いやいい。もう俺は色々と腹をくくった。何か…総てがぶっこわれた気がする。もう…どう足掻いたって、俺は…」

瞳から光を無くし、遠くを見つめるゼロを見て、俺は慌ててゼロの額に自分の額をぶつけた。

「っ…何…すんだよ」

額を抑え、俺を睨んでくるゼロにほっとする。

ゼロが暗闇に連れて行かれる前に、俺が何とかしなきゃ。

ゼロが小百合達に連れて行かれる隙がないように、俺がゼロをしっかりと掴んで離さなければいい。

俺以外の事を考えられないようにすればいい。

俺を照らして温めてくれるゼロの光を奪うなんて、俺が絶対に許さない。


「ハイジ…?」

俺から体を離そうとするゼロを腕の中に閉じ込める。

「ゼロ、負けちゃ駄目だ」

「何言ってんだよ。俺は負けてねぇし、覚悟してたことだし別に何ともねぇよ」


「ゼロ、気づいてないの?」

「何言ってんだよハイジ」

不思議そうな顔するゼロに胸がギリギリと痛む。

俺はゼロの手を取ると、ゼロの目線に合うように持ち上げた。

安心させるようにその手をぎゅっと強く握り締めると、ゼロの顔が歪んだ。

「…あ…っ」

ゼロは怯えるように自分の手を見つめ、硬直する。

俺は激しく震えるゼロの手の甲に何も言わず唇を押し当てた。





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