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少し間をおいて小百合は深い息を吐いた。

「言うこと聞いたら、ご褒美をくれる…?」

涙を浮かべ、どこか甘えたような口調でそう言う小百合に、俺は一瞬硬直した。

予想をしていなかったその言葉を聞いて、どう返すかを考える。

「どんな褒美が欲しいんだ」

僅かな好奇心からそう聞き返すと、小百合は縋るような目を俺に向けた。

「それ外した姿で、話を聞いて欲しい」

それ、と俺のバンダナと眼鏡をさしてそう訴える小百合に、俺は眉を寄せる。

俺が不快に思ったのがわかったのか、小百合は慌てて付け足した。

「天使に、懺悔がしたい」

意味がわからない、そう思い頭を捻っていると、黙っていたエドアンが口を開いた。

「何を懺悔するんだ?」

エドアンがそう尋ねると、小百合はエドアンを馬鹿にするように笑った。

「別にゼロをヤったことを悔やんでる訳じゃねぇよ。寧ろ微塵も悪いなんて思ってねぇよ」

「だったら何を懺悔するんだ」

理解できずに小百合にそう尋ねると、小百合は気まずそうな顔を見せた。

「…最近眠れないんだよ。知り合いに…追いかけまわされて心臓をえぐり取られる夢を見る」

どうやら悪夢にうなされるから、話を誰かに聞いて欲しいということだった。

だが何故それが俺なのか、理解できそうにない。

「いいぜ。やることやったら考えてやる」

取り合えず適当な返事を返すと、小百合は目を固く閉じ覚悟を決めたように唇を噛み締めた。

小百合はナイフを握る俺の手の上から自分の手を合わせ、勢いよく動かした。

痛みに声すら出せないのか、紅く染まる耳元を抑え悶絶している小百合を視界に入れながら、俺は静かにバンダナを外し、眼鏡を外した。

本当は小百合が自分で耳を切り落とそうが、ご褒美をやる気などさらさらなかったが、こんなにも醜い姿をした俺に懺悔をしたいと言う小百合に少し興味が沸いた。

俺は床に座り込み、痛みに悶えている小百合と視線が合うように屈んだ。


「小百合」

俺が静かに名前を呼ぶと、小百合は固く目を閉じていた瞼を開き俺を視界に入れた。

目の前の男は一瞬眩しそうに顔をしかめたが、すぐに言葉にならない声を発し俺の方に手を伸ばしてきた。

そして、俺の服を掴み縋り付くように次々に言葉を紡いでいった。


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