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シンの胸に顔を埋め泣きじゃくるハイジを、シンはどこか愛おしそうに、困っているようでそのままのハイジを受け入れるように、見つめている。
シンは自分の上に跨がりしがみついてくるハイジを退かそうとはせずに、躊躇いがちに、それでいて何かを確かめるようにハイジの背中に腕を回しハイジを抱き返した。
二人のやり取りを見て、ハイジの狂気が薄れていくのがわかった。
暫くしてシンはハイジの顔を上げさせると、つけ加えるように口を開いた。
「…お前は馬鹿だな。新人歓迎パーティーで負けた時点で、俺は…お前のもんなんだよ。本来なら俺はサンドバッグになるか、見世物になるか、奴隷になって、今頃ここの囚人に好き放題にされているはずなんだよ。
切り刻むなり、俺を性奴隷にするなり、他の奴らに売り渡すなり、お前の自由だ。
お前が俺をダチだっていうなら、俺はお前のダチなんだよ。
俺はノアの箱船のNo.2であるが、俺そのものはお前のもんなんだよハイジ。
俺はお前の優しさに甘えて、付け上がってるんだぜ?そんな俺相手にお前が泣く必要はねぇんだよ」
ハイジを諭すように柔らかい口調でそう告げるシンに、ハイジは直ぐに表情を曇らせた。
「シンは、俺の友達に嫌々なってくれてるの?」
再び瞳に悲しみを滲ませるハイジを見て、シンは呆れたように視線を動かす。
「だから俺はお前に甘えて付け上がってるって言ってんだろ?本気で嫌ならとっくの昔にお前に再戦を申し込んでるか、お前に切りかかって今頃お前の兄貴に殺されていただろうよ」
シンがそう言うと、ハイジは涙を腕で拭い安心したように微笑んだ。
「…よかったねシン、俺が優しくて。安心していいよシン、今の所俺、シンにやらしいことさせる気ないから」
「…うるせぇよ」
ハイジが冗談を言うようにそう言うと、シンはいつも通り悪態をついた。
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