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「…ハイジ」

「なぁに?兄ちゃん」

「俺達は本物の兄弟になれると思うか」


ハイジは俺の言葉を聞いて不思議そうな顔をする。

「俺には兄ちゃん以外の家族なんて居ないよ。
血の繋がってない兄ちゃんが俺にとっては一番本物。兄ちゃんは俺のたった一人の家族だよ。兄ちゃんは違うの?」

ハイジが放ったその言葉は、俺の胸に開いた穴を完全に塞いだ。

そしてこの瞬間、俺の中に微かに残っていた常識や真っ当な概念が消え失せた。

ハイジのその問いに、自然に言葉が口からこぼれた。

「俺にも家族なんて呼べる人間はお前しか居ねぇよ。俺を人間として見てくれるのはお前だけだ。俺には…お前だけだハイジ」

俺がそう言うとハイジは再び涙を溢れさせた。

今まで無理矢理抑えこんできたものや堪えてきたものを吐き出すように、ハイジは壊れたように俺の腕の中で泣き続けた。

ハイジの涙が枯れた頃、俺はハイジを自分の膝の上に倒した。

「もう寝ろ。直に忙しくなる」

俺の行動に驚いたように目を丸め見上げてくるハイジを見つめ返しながらそう言うと、ハイジは俺の膝に頭を預けたままゆっくりと両腕を伸ばした。

特にやめさせることもせず、ハイジの行動を静かに見つめていると、ハイジは伸ばした両腕で俺の顔を包みこんだ。

「兄ちゃん」

「…何だ」

「俺ね、兄ちゃんの瞳の色好きなんだ」

「…こんな気持ち悪い色の何がいいんだ」

俺がそう言うと、ハイジは一瞬悲しそうに顔を歪めた。

「気持ち悪くなんてない。兄ちゃんの目を見てると俺ほっとするんだ。吸い込まれそうなくらいに綺麗で透き通っててね、誰も寄せつけないくらいに冷たくて鋭いんだ」

ハイジの言葉の意味を汲み取れず困惑していると、ハイジは深く息を吸った。

「…兄ちゃん、これから先どんなことがあってもずっと俺の兄ちゃんで居てくれる?」

ハイジは不安そうに瞳を揺らしながら俺を下から見上げた。

俺は少し考えた後、ハイジの顔に自分の顔を近づけた。

ハイジの前髪を上に流し額に軽く口づけると、ハイジは驚いたように口を開けた。

「…お前が俺を必要とする限りずっとお前の兄貴でいてやる」

そう言ってハイジを見下ろすと、ハイジは瞳に涙を浮かべ、涙を隠すように両腕で自分の顔を覆った。



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