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ハイジは暫く堪えるように歯を食いしばり鼻をすすっていたが、まだ俺に聞きたいことがあるのか躊躇いながら口を開いた。
「兄ちゃんは…これからどうするの…?」
俺はハイジのその問いに何と答えようかと考えを巡らせる。
これから。俺にそんなものがあるとは到底思えなかった。
何も答えない俺を見て、ハイジは恐る恐る口を開いた。
「その…ちょっと太ったおじさんと一緒に暮らすの?」
「…何言ってんだお前」
ハイジの放つ言葉の意味が理解出来ず静かにそう返すと、ハイジは怯えるように体を固くした。
「だって、あのおじさんは兄ちゃんの血の繋がった父さんなんでしょ?」
「まぁそう言うことになるだろうな。だが、一緒に暮らすなんて選択肢は俺にはまずありえねぇし、仮にあったとしてもまず不可能だな」
投げやりに何の感情も込めずにそう答える俺に、ハイジは困ったように瞳を揺らす。
「どうして不可能なの?」
素朴な疑問だと言うようにそう尋ねてくるハイジに、間を開けることなく答えを返した。
「車のブレーキに細工して随分前に俺が殺した」
躊躇うことなくそう答えるとハイジは、それだったら一緒に暮らすのは無理だね、と納得したように言葉を吐いた。
「俺にはもう何もない。明日を生きる目的もなければ、生きる意味もわからねぇ。だから早く俺を殺せばいい、抵抗はしねぇから。お前に殺されるのなら納得がいく」
早く楽になりたくて俺がハイジの目を見つめそう訴えると、ハイジは目を見開き顔を強張らせた。
「何言ってんの…?どうして…俺が兄ちゃんを殺すの…?」
声を震わせ、激しく動揺しているように見えるハイジのその言葉は俺にとって予想外な言葉だった。
「他の誰よりも俺を憎み怨んでいるんじゃねぇのか。俺はお前から光を奪い地獄に突き落とした」
ハイジがうろたえ、哀しそうに顔を歪める意味が俺には全く理解が出来なかった。
状況についていけずにハイジを見返すと、ハイジは何故か大きなダークグリーンの瞳から勢いよく涙を溢れさせた。
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