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「今はてめぇらと遊んでやる気分じゃねぇからまた今度な」

俺の顎を捕らえていた囚人から俺を引き剥がして興味なさげにそう言うと、ワンワンは先へ進もうと俺の背中を押した。

俺はワンワンから有り余る程の余裕を感じて、少し安心する。

そうだよ、ワンワンが居るんだし別に俺1人って訳じゃない。

「早く帰らないと兄ちゃんが心配するからごめんね。また今度遊ぼうね」

そう声をかけて階段を降りようとすると、急にワンワンが動きを止めた。

ワンワンの背中越しに前を見ると、俺達の通り道を塞ぐようにして3人の囚人が俺達の前へと回り込んでいた。

「チェシャ猫に飼われてる犬っころの癖に偉そうにしてんじゃねぇよ。

聞いたぜ?お前ネバーランドの奴とやり合って怪我してるらしいじゃねぇか。ネバーランドの囚人なんかに怪我させられる程弱い奴だったなんて知らなかったぜ」

ワンワンの顔に顔を近づけて嫌な笑みを零す囚人に、ワンワンは眉をひそめる。

「どんな大男にやられたんだ?」

「まさかっ!アリスの森のあの番犬様がネバーランドの奴なんかにやられる訳はねぇよな?シンの奴いつも手を抜いてやってんじゃねぇのか?」

次々にワンワンをわざとらしく馬鹿にする言葉を吐く囚人達にワンワンの表情が怒りに歪んで行く。

何でそんな意地悪な事を言うんだろう。

アリスの森とエデンは仲が悪いのかなぁ。

猫さん、ピンクの鶏さんにピリピリしてたし。


そんな事を考えていると、もう我慢の限界だと言うようにワンワンが目の前でワンワンを挑発し続けている男に掴みかかった。

「怪我してる今の俺になら勝てるって?だったらやってみろよオラ。3人まとめて相手してやるから。お前らがアリスの森の囚人に喧嘩売る度胸がある奴だとは思わなかったぜ」

ワンワンがギリギリと男の胸ぐらを圧迫しながら自分の下唇にゆっくりと舌を這わすと、男は怯んだのを誤魔化すように乾いた笑みをこぼした。

「はっ…てめぇみたいなのは大人しく足開いてればいいんだよ。チャラチャラ女みてぇに着飾るのが好きなカマ野郎はなぁ?」

その言葉を聞いた瞬間にワンワンの目の色が変わった。

…もしかしてワンワン気にしてるの?

何となく直感的にそう悟る俺の目の前でワンワンが、胸ぐらを締め上げていた男を壁に叩きつけて右の拳を振り上げる様子が目に映った。




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