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ゼロはそう言って自分の胸元を右手で強く握り締めると、痛みに耐えるような表情を浮かべた。

泣きそうになる…か。

俺には、ゼロを苦しめている感覚を到底理解出来る訳がない。

何故ならゼロがハイジに抱いているようなそんな感情を、俺は抱いた事がないからだ。

理解出来る訳がないのにどうして。

…どうして、俺はゼロに共感を覚えているんだ?

「クララさん…?」

口を閉ざした俺をベリーズは不思議そうな顔で見つめる。

「…ハイジなら、受け入れるにしろ、受け入れないにしろ、本気で自分を思ってくれる奴を邪険にはしない。だから安心しろ」

俺は直感的にそれ以上深く考える事を止め、ゼロにそう言葉を返す。

見え隠れしている俺の本心を俺はいつものように覆い隠した。

「ゼロは恵まれてますよ。僕の方が散々ですよ。僕はさっきのダメージから暫く立ち直れそうにありませんから」

深いため息をつき、遠くを見つめながらそう呟くベリーズに、不安を浮かべていたゼロの顔に普段の表情が戻った。

「…そうだな。お前に比べればマシかもな」

さっきのワンとベリーズのやり取りを思い浮かべているのか、ゼロはベリーズ同様遠くを見つめる。

「そうですよ。正直クララさんがあんなに危険で性格の悪い人とハイジさんを2人っきりにするとは思いませんでした。

意外です」

ベリーズの口振りから、もうワンと関わりたくないと言う強い気持ちが窺える。

「明日生きてるかわからねぇからな。出来る限りあいつの好きなようにさせてやりたい。

それにこれから俺が側に居てやれない機会が増えるだろうし、1人でも自分を守れるようにここの空気に慣れさせた方がいい」

俺がそう答えるとベリーズは納得したのか小さく相槌をうった。

俺は不満を募らせているベリーズを横目で見つめながら、もしかしたらワンのあれはベリーズの為にわざとあぁ言う態度をとったんではないかと、そんな気がしてならなかった。

もしワンがベリーズの告白を喜んで受け取っていたら、ベリーズはワンに何をされていたかわからない。

ベリーズには拒否権はねぇだろうから、万が一付き合うなんて事になった日には、男に全く興味のないベリーズにとってはまさに拷問だろう。

それをわかっていたからベリーズを逃がしてやったんじゃないのか。

まぁ、本当にベリーズに興味がなかっただけかも知れねぇから何とも言えねぇけど。




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あきゅろす。
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