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―side RAKUHA―

「ハイジと何かあったのか?」

ゼロを追うようにして図書室を出た後、同じ4階にあるトレーニングルームを見て回りながら俺がそう質問すると、床を見つめていたゼロは下唇を噛みしめた。

何かを訴えるような眼差しで俺を見上げるゼロを見て、俺はどうしたものかと頭を悩ませる。

「…何でもないんだ。俺が勝手にオカシイだけで」

だから早く次に行こうと俺の腕を引くゼロを引き止める。

「それはハイジのせいなのか?ハイジがお前に何かしたのか?」

俺がそう尋ねると、ゼロは何かを考えるように眉間にシワを寄せた。

「…そうだけどそうじゃねぇ」

言いにくそうに吐かれたその言葉を聞いて、ハイジがゼロの悩みの源だと言う事を改めて確信する。

もしかしたらハイジの兄である俺には言いにくい事なのかもしれねぇな。

後で一応エドアンにゼロの様子がオカシイ事を話した方がいい。

そう思った所でフッと試合終了後のエドアンとの約束を思い出した。

そして明け方の出来事も思い出した。

明け方と言うよりは完全に夜だった気もするが。

あれから何時間も経っていると言うのに、頬に触れたエドアンの唇の感触と強く抱きしめられた時の感覚が体から消えない。

…それにさっきチェシャ猫に舐められた何とも言えないあの感触が加わって、全体的に妙な感じがする。

エドアンは俺と話がしたいと言っていたが何を話すと言うんだろうか。

ランニングマシンの側に設置された赤いベンチに腰を降ろしたまま、険しい顔で足元を見つめているゼロの隣に腰を降ろし、俺は考えを巡らせる。

「…何ですか2人共、似たような格好をして。恋患いですか?」

俺達以外に誰も居ないトレーニングルームを伸び伸びと満喫していたベリーズが俺とゼロの元へ戻って来ると、第一声にそんな言葉を吐いた。

「こ…恋患いっ?!ふふざけんなっ!んな訳あるかよ、いくらアイツの寝顔が有り得ねぇくらい可愛くて、女みてぇに睫毛長くて肌が有り得ねぇくらいに白くても、べ別にドキドキしたりしねぇしっ、俺は男に興味がねぇんだからな」

ゼロはベリーズの発言を聞いて、ベンチから転げ落ちそうになりながら早口で必死に否定をする。

…そうか、ゼロはハイジが好きなのか。





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