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俺は短くお礼を言って、椅子ごとワンワンの方に体を向けると、昨日のゼロとの出来事をなるべく細かくワンワンに説明した。

「ゼロが俺にどうして欲しいのかがまったくわかんなくてさ。

どうすればゼロを元気にする事が出来ると思う?
どうしたら俺、…ゼロに嫌われない?」

さっき俺とは目を合わせずに無言で出て行ったゼロの姿が蘇り、嫌な考えばかりが頭を駆け巡る。

ワンワンが口を開くのを構えていると、バシッと額を叩かれた。

「…何で今俺バシッてされたの」

「悪いな、手が勝手に。なぜか無性にお前の額を叩きたい衝動にかられた」

額を抑えながらワンワンに抗議すると、白々しい顔でそんな事を言われた。

ワンワンは疑り深い目で俺に隈無く視線を滑らせると、呆れたように息を吐いた。

「アイツの俺に向けたあの目の意味がよーく理解出来たぜ。俺とシンはアイツに取って、さしずめお前に近寄る悪い虫ってか」

付き合ってられるか、と言った顔で作業に戻るワンワンに当然納得出来るわけもなく。

ワンワンの肩を掴んで揺さぶり続きを催促する俺を、ワンワンは鬱陶しそうに見つめ返した。

「ねぇねぇっそれってどう言う事?教えてよ〜ワンワン〜」

「…マジうざってぇな、真剣にノロケるんじゃねぇよ」

ワンワンは面倒くさそうに俺の方に顔を向けると右手を伸ばした。

「好きなんだよ、お前の事が」

急に首を触られビックリしていると、ワンワンは直ぐに手を離して布と照らし合わせた。

再びナイフを手に取り、布を切断していくワンワンを見て、サイズを測っていた事がわかる。

「…っ!俺もワンワン大好きだよっ」

「…違ぇよ馬鹿。俺じゃなくてゼロだっての。気持ちはわかるが俺にときめくなよウゼェから。一体どういう脳味噌してんだお前は」

嬉しさのあまりワンワンに飛びつき、ぎゅうぎゅうと抱きしめる俺を、ワンワンは呆れた顔をしながら冷静に引き剥がした。

「え…ゼロが俺を好きなの?」

「何だよその微妙なリアクションは。嬉しくねぇのかよ?」

意外そうに俺を見つめるワンワンに何と答えようか迷ってしまう。

「いやそうじゃなくて、もしそうなら飛び上がるくらいに嬉しいよっ?!
けど…違うんじゃないかなぁ。多分嫌われてはないとは思うんだ。前に俺を嫌いにならないって言ってくれたから。

嫌われてないけど特別好かれてもない気がする。

何か俺いつも一方通行でゼロに迷惑かけてるから」



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あきゅろす。
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