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◇◇
―side HAIJI―
ゼロを追うように図書室から出て行ってしまった兄ちゃんとベリーズに、俺は少しだけ寂しさを感じた。
昨日何でゼロが泣いていたのか、俺は自分のいいように解釈していただけなのかもしれない。
…本当は俺が何か気づかない内にゼロを傷つけていたのかな。
「ハイジ、そこにあるのから好きなのを選んで俺に渡せ」
ワンワンの声にハッとして、俺は慌ててワンワンの指示通り机の上に置かれたカラフルな布の山に目を向ける。
俺の好きな色。
好きな色は沢山あるけど、一番好きな色はやっぱりこの色。
「俺これがいい」
俺は手を伸ばして布の山から一枚を抜き取りワンワンに渡す。
「…別に首輪までエリアカラーにしなくてもいいんじゃねぇか?」
他の色じゃなくていいのかと確認してくれるワンワンに俺は首を振って見せる。
「別にそう言う意味でこの色にしたんじゃないよ?この色は俺の中で最強に綺麗で安心する色なんだ」
「へー、お前ネバーランドに配属になって良かったなぁ。お前の好きな色ばっかりじゃねぇか」
「うん。だから俺幸せー」
俺が笑顔でそう答えるとワンワンは納得したように眉を上げ、俺の渡した淡いスカイブルーの布を加工し始めた。
俺は器用に針を布に通していくワンワンの姿に何となく温かさを感じて見とれてしまう。
ワンワンって意外と手が綺麗だ。
「ハイジ、ちょっとナイフ貸せ」
「ちょっと待って、今出すから」
「ん、サンキュ。直ぐに返してやるから」
「俺ワンワン疑ってないから好きなだけ使っていいよ」
「…バァカ疑えよ。危ねぇだろ、他の奴には気安く渡すなよ。二度と戻って来ねぇだろうし、悪けりゃ刺されるからな」
「うん」
ワンワンは視線を手元に向けたまま俺にそう言って、俺の渡したナイフで糸を切り、布を切っていく。
「ねぇワンワン」
「ちょっとそこの糸取れ」
「うん、ハイ。あのさぁ…相談にのってくれない?」
俺がワンワンにグレーの糸の束を渡しながらそう言うと、ワンワンは動きを止めて驚いた顔で俺の顔を見返した。
「…相談?…俺にか?」
「うん、駄目?今俺スッゲー困ってるし悩んでるんだぁ」
ゼロの泣き顔と怒った顔を思い浮かべながらそう答えると、ワンワンは俺から目をそらして再び手を動かし始めた。
「お前にも悩みがあるなんて予想外だぜ。いいぜ、言ってみろ。特別に聞いてやる」
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