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「ピンクの鶏さんって猫さんに何かしたの?」

上の階へと続く階段を上りながらハイジは不思議そうな顔をしてゼロとベリーズにそう尋ねた。

ハイジのその質問に、2人はお互いに顔を見合わせて肩をすくめて見せた。

「さぁな。俺達ここに来てまだ日が浅い方だし知らねぇよ。前に気になってリズに聞いた事はあるけど上手く誤魔化されたしな」

ゼロがそう言うとベリーズは同意するように数回頷いた。

「詳しい事は知りませんけどあの嫌われ方は何かしらやってますよ。リズはデリカシーって言う言葉を知らない人間ですから、繊細なタイプのチェシャ猫に取っては生理的に無理って奴なんじゃないですか?或いは、あの節操なしのリズの事ですから襲ったのかも知れませんね」

「あぁ、それはあり得るな。チェシャ猫のあの容姿ならリズが言い寄ったとしても不思議じゃねぇし。それでこっぴどく振られたんじゃねぇの」

「まぁどっちにしても、リズが今現在生きている事を考えると些細な事だと思いますけど…」

ゼロとベリーズの予想論を側で聞きながら、俺は内心もしそうならチェシャ猫を口説き、襲う度胸を持ち合わせているピンクの鶏は、実はもの凄い人間なのかもしれないと思った。

だが、猫と鳥が仲が悪いと言う事にそこまで興味がなかった為、2人に散々な言われ方をされている鳥人間のフォローをする気にはならなかった。


◇◇

「ワンワンどこーっ?ちゃんと来たよ俺ー!」

「聞こえてるしわかったから少し落ち着け。もう少し静かに入って来れねぇのかよお前」

ブロンズの扉を開き、図書室に足を踏み入れるなりハイジが強い自己主張をすると、奥から直ぐに返事が返って来た。

聞こえて来た声をたどり、視線を図書室の内部に向ける。

すると誰も居ない閲覧スペースに陣取り、視線を手元に向けたまま機械的な動作で手を動かしているワンの姿を視界に捕らえる事が出来た。

ワンの姿を確認し、嬉々としてワンの元へと走りよるハイジの後を追うようにして俺達も足を進める。

ハイジは吸い寄せられるように、足を組んで縫い物をしているワンの隣の椅子に跨るとワンの手元を覗き込んだ。

「はぁ…スッゲェなぁ…」

「バァカ、危ねぇからそんなに顔近づけんな」

感嘆の声をあげて目を輝かせるハイジを、ワンは適当にたしなめると作業していた手を止めて顔を上げた。



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