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俺の意識は完全にチェシャ猫から離れていた。

さっきから何も言わず、俺を後ろから拘束するエドアンの表情や様子がわからず嫌な汗が流れる。

俺が勝手な行動を取り、チェシャ猫と交友関係を結んだ事を怒っているんだろうか。

そう思い、何となく後ろを振り返る事に躊躇いを感じていると、がさつな足音を立てながら1人の男が人混みを掻き分け近づいて来た。

遠くからでも目立つその立派なピンク色の鶏冠が近づいてくるのを何とも言えない心境で見つめていると、数秒前まで笑みを浮かべていたチェシャ猫に異変が起きた。

見る間に眉を寄せ、露骨に嫌そうな顔をするチェシャ猫を見て俺はある事を思い出した。

そう言えばチェシャ猫はピンクの鶏を毛嫌いしている様子だったが、実際に顔を合わせるとどう言う事になるのか。

俺のそんな疑問は直ぐに解決した。

「お前らこんな所で何やってんだよっ、試合が始められねぇからってノアの連中がイラついてる。コイツは兎も角、お前は早く向こうに行け。じゃねぇとノアに睨まれるぜ」

焦りを浮かべた表情でやって来たピンクの鶏は、少し驚いたようにチェシャ猫を横目で確認しながらエドアンにそう伝える。

「悪いなリズ。直ぐに行く。クララ、ゼロとベリーズを頼む。終わってからネバーランドに迎えに行く」

エドアンはすまなさそうな顔でピンクの鶏に謝罪し、最後に俺にそう言い残すとリングの方へ戻って言った。

ピンクの鶏はエドアンが先に行ってしまった事で自分の戻るタイミングを逃してしまったのか、気まずそうな顔でチェシャ猫に数回視線を送る。

「お、お前らも観戦するんなら早く行った方がいいんじゃねぇのか?」

「いや、俺達は観戦しない。だから気にせず向こうに戻っていいぜ」

不自然な笑みを浮かべながら“俺に”話かけるピンクの鶏に違和感を感じながらもそう返し、図書室へと向かおうとするとチェシャ猫が俺を盾にするようにして俺の背後に移動した。

逃すまいと俺の腹部に腕を回し、先程のエドアン同様俺の背中にはり付くチェシャ猫に足を止められる。

「…何なんだよ。お前も早く向こうに行けよ。じゃないと試合が始まらねぇんじゃねぇのか?」

「始まらないかもねぇ。俺の所にも新人居るし」

チェシャ猫の行動に困惑しながらそう言って聞かせるも、チェシャ猫は俺にはり付いたまま動かない。



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あきゅろす。
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