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「昨日より顔色がいいな。今日は労働中お前が居なくて平和だったぜ」
「またまた、寂しかった癖に無理しちゃってぇ。てかそれ何持ってんの?」
チェシャ猫は上半身を起こしながら、俺が手に持っている袋に興味をしめす。
「あぁ、ハイジ達の夕飯だ。お前も食べるか?」
袋の中からパンを取り出しチェシャ猫に手渡すとチェシャ猫は珍しいものを見るようにパンを見つめ目を丸めた。
チェシャ猫は受け取ったパンにそのまま食らいつきながら俺の顔を見つめ瞬きを数回繰り返す。
「何か疲れてんね、若いのに」
何とも男らしい食べ方でパンを喉に通しながら、気の毒そうにそう言うチェシャ猫に俺は溜め息を吐き出した。
「…まぁな。誰かのせいで昨日なかなか眠れなかったしな」
「ぇー?もしかして俺オカズにされちゃったの?言ってくれればいくらでも付き合ってあげるのに」
「…やめろよ、しゃれにならねぇから」
それだけ言って口を閉じると急にチェシャ猫の顔が目の前にあって息が止まりそうになる。
「んー…ちょっと機嫌悪い?」
何も答えずに間近にあるチェシャ猫の顔を見つめ返しているとチェシャ猫は額を俺の額にぶつけてきた。
「お前表情あんまり変わんねぇから感情が読み取りにくいけど、だんだんわかって来たぜ。今結構イライラしてるし、落ち込んでるし、泣きたい感じでしょ」
「否定もしねぇし肯定もしねぇ」
俺はチェシャ猫の肩を押して顔を背ける。
そんな俺を見てチェシャ猫は面白そうに笑みを零した。
「難儀な性格してんなぁ。まぁお前らしいけど」
チェシャ猫は肩を回し欠伸をすると上体を倒してベッドに横になり、天井を見つめる。
「俺としてはブチ切れて壊れちゃってるラクハをみたいんだけどねぇ。昨日のお前は最高にエロかったし。よく平気だよね、そんな人形みたいに生きててさぁ。俺なら発狂してるよ」
まぁ今も似たようなもんだけど、そう呟いて俺を嘲笑うように笑みを浮かべるチェシャ猫の言葉は俺の心の奥を容赦なくえぐる。
えぐられた所で別に驚きもしねぇけど。
「俺はお前と違っていちいち発狂してられる程暇じゃねぇからな」
「…そうだよねぇ。お前には可愛いハイジが居る。ハイジがいるからそんなに強いんだろうね。
…けど、ハイジが居なくなっちゃったらどうなっちゃうんだろうねぇお兄ちゃん」
もうすっかり見慣れたチェシャ猫のふざけた笑みを見て俺は眉をひそめた。
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