312 1階広間でハイジ達と合流した後、ゼロとベリーズが食堂に行く事を嫌がったのでそのままネバーランドへと戻った。 「チェシャ猫の見舞いと何か食堂から食べ物を調達してくる。ノアが裏切りでもしない限りは安全だ。だからお前らはゆっくり休んでいろ」 「うん、わかった。兄ちゃん気をつけてね」 心配そうな顔をするハイジと申し訳なさそうな顔をするゼロとベリーズの頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら、俺はシン・アベルに声をかける。 「俺にボディガードは必要ない。俺が戻るまで念の為にネバーランドの入り口の前で見張りを頼めるか?」 「わかったよ。けど、アンタが戻って来たら俺は帰るぜ」 昨日よりも若干疲労の色が見えるシン・アベルの言葉に軽く頷き俺は食堂へと向かった。 ロビーは昨日同様殴り合いやリンチをしている囚人達で溢れている。 俺はそんな囚人達の間を通り抜けて行く。 階段を半分くらい上った所で急に視界が暗くなった。 見上げると上から降りて来た囚人達に道を塞がれていた。 ナンバープレートの色は赤、オレンジ、黄色、の囚人が混ざっていて、おそらく食堂から出て来た所なんだろうと察しがつく。 アリスの森の囚人は俺を見ると昨日の事を思い出したのか俺をスルーして下へと降りて行ったが残りの囚人は退こうとはしない。 朝からずっとこの調子だ。 地下通路を歩いている時も労働中も、目が合えば口笛を吹かれ、通りすがりに俺に声をかけては俺を不快にさせる。 「どこに行くんだ天使様。俺が送って行ってやろうか?」 「せっかくあんな面してんのに隠すことはねぇだろ。俺達にも間近で拝ませてくれよ」 「そんなに警戒することはねぇって、俺達は紳士だぜ?」 馴れ馴れしく俺の肩を抱き、俺の体に触れてくる囚人達に俺は限界を感じる。 「退かねぇなら退かすまでだ」 俺は強引に俺の眼鏡とバンダナを外そうとしてくる囚人から体を避け、階段の下へと突き落とすと、空いた1人分のスペースを通って階段を上っていった。 ◇◇ 「本当に来たよ。マジうけるー」 医務室に顔を出した俺の姿を確認するやいなや俺を指差しケラケラと笑うチェシャ猫の笑い声を聞き流しながら、俺は椅子をチェシャ猫のベッドに近づけ腰を降ろす。 BackNext [戻る] |