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「多分僕も同じだからですね」
「同じ…?」
「僕こう見えても5人兄弟の長男なんです。両親を早くに亡くして、借金返済+弟達を養う為に色々な事をしてきました。だけど僕は弟達を守る為だと思っているので罪悪感を感じてませんし、多分ここを出てからもまた同じ事を繰り返します」
ベリーズが5人兄弟の長男だと言う事実に驚いたが、だからしっかりしているのか、と納得させられる部分もあった。
「因みに刑務所に入れられるのは今回で3回目だったりするのでラクハさん達より僕の方が1回分先輩ですね」
曖昧な笑みを浮かべながらそう言うベリーズを見て、ベリーズが俺を見つめる眼差しに悪意がない理由がわかった気がした。
「お前も苦労してんだな」
俺がそう言うとベリーズにラクハさん程じゃないですよ、と笑われた。
「ウチの弟達も相当手がかかると思ってたんですけど、何て言いますかハイジさんを見てるとまだまだ可愛いなって思いますよ。まぁウチの弟達は世界一可愛いんですけど」
「いや…そこは同意できねぇな」
「わかってますよ。ラクハさんの1番はハイジさん以外にあり得ませんよね。僕だってハイジさんは可愛いと思いますけどどんなに手がかかってもやっぱり自分の弟達が1番可愛いですから」
自慢の弟達を思い出しているのかベリーズの表情は緩みきっている。
ベリーズは床を掃除する手を止め俺を大きく丸い目でじぃっと見つめてくる。
「別にラクハさんだけが悪人って訳じゃありませんよ。ここに居る人はみんな悪人なんですから、あんまり自分だけを責めないでくださいね。
いい人過ぎる船長とお人好しのラクハさん達を利用して自分の身を守っている僕も十分卑怯で悪い人間です。そんな僕にラクハさんを軽蔑する資格なんてないですよ」
もしかしたらベリーズはずっと罪悪感を感じていたのだろうか。
「ガキは甘えてればいいんだよ。利用出来るものは利用すればいい。死ぬ訳にはいかないんだろ?」
俺がそう言うとベリーズは困ったように笑った。
「ラクハさんって何だかんだ優しいですよね。勿論そうさせてもらいます。僕ずっとお兄さん欲しかったんで僕を甘やかしてくれる船長やラクハさんの側にいると何だかくすぐったいです」
照れたように頬をかきながら小声でそんな事を言うベリーズのその言葉は俺を困惑させる。
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