300 「あの人はとてつもなく恐ろしい人だけど、俺達に道を作ってくれて導いてくれる。居場所のない俺達に居場所をくれるんだ。 それに俺達がロゼさんを不快に思わせない限りは俺達の側に居てくださる。 まぁ…気を抜くとそれはもう恐ろしい事になるけどな。 とにかくロゼさんはすげぇ人なんだよ」 誇らしげにそう説明するワンワンの表情から今の話が真実である事がわかる。 「と、言うわけで。ロゼさんがお前の兄貴と仲良くなりたいっつー事は必然的に俺達はお前らと仲良くしなきゃならねぇって事だ。お前の兄貴は気に食わねーけどお前は割と好きだぜ。 これから仲良くしようぜハイジ」 ワンワンはそう言ってにぃっと悪い笑みを浮かべると、拳を俺の方に向けた。 俺は意味を汲み取れずに向けられたワンワンの拳を凝視する。 「何してんだよ、お前も手を出せよ。友情の証だぜ?」 ワンワンがそう言うので嬉しくなって疑うことなく右手の拳を前に出すと、ワンワンは自分の拳を俺の拳に思いっきりぶつけて来た。 「ちょっ?!…いってぇ〜、いきなり何なのもうっ」 ビリビリする右手を撫でながらそう訴える俺とは裏腹に、ワンワンは楽しそうに笑った。 「騙されてんじゃねぇよバァカ」 直ぐに反論しようと思ったけど、ワンワン楽しそうに笑ってるし何かどうでもよくなってくる。 ワンワンはくっくっと笑いをこらえながら立ち上がると医務室に行くのかふらりとネバーランドを出て行った。 俺もそんなワンワンを見て慌ててついて行こうと思ったけど、視界に赤いものが映って進む方向を切り替えた。 「…お前体ヤバいんだろ、さっさと医務室行けよ」 俺がさっき壁にもたれさせた状態のままで冷たい床に座り込んで動こうとしないゼロに俺は違和感を感じた。 「ゼロの方こそ、こんな冷たい所にいないで早くベッドで休まなきゃダメだよ」 「…まだ回復してねぇんだよ。お前と違って体力ねぇんだよ俺は、いいから早く医務室に行けよ。もう少ししたら俺も房に戻る。だから早く行け」 そっけない態度でそう告げ視線をそらすゼロの様子に俺は何となくわかってしまった。 俺は屈んでゼロと視線を合わせるとゼロの体を触る。 「何してんだよっ」 俺は抵抗するゼロを無視して触り続ける。 俺がゼロの左足の股辺りを触った時にゼロは声を漏らして俺の腕をとっさに掴んだ。 「いつから…?どうして言わなかったの?」 Next [戻る] |