259 ◆◆◆ ーside HAIJIー ばきっと言う鈍い音と右の拳のこの痺れる感じ。 こう、何て言うんだろう、血が騒ぐって言うかさ。 「ハイジさんっ?!その人違いますよ!!こっちです、こっちの人です!」 「え?あ、そうなの?あははは、ごめんね間違えちゃったぁ」 危ない危ない、味方を殴ってたなんて。ベリーズに言われるまで全然気づかなかった。 俺夢中になると周り見えなくなるから気をつけなきゃ、と意識を改めなおしながら俺はベリーズが教えてくれた人にまわし蹴りを食らわせる。 「味方を殴る奴があるかよ」 背後から聞こえてきた吐息混じりの声に後ろを振り返るとゼロがちょっとピンチな感じだった。 俺はゼロめがけて鉄パイプを振り降ろしてくる体格のいいライオンさんの腕を寸前で押さえつけて頑張っているゼロを横目で確認しながら、錆びたノコギリで切りかかってくる目の前のライオンさんの鳩尾に取り合えず重い一発を入れる。 「だってこうも人が密集してるともう何がなんだか」 ゼロにそう返事を返しながら床に蹲る囚人の側に転がる錆びたノコギリを拾い上げる。 「見てこれ、ノコギリだよ?!危ないって!!相手も本気だね」 感心しながら俺は、するりとゼロの方に体を移動させ俺は両手でしっかりと握ったノコギリを大きく横にスライドさせる。 大きな顔の左側面にノコギリが衝突して錆びた刃の部分が粉砕する様子を目に映しながら、残った柄(え)の部分でさらにもう一発お見舞いした。 「そんな危険なノコギリで躊躇わずに人の横顔を強打出来るハイジさんも同じくらい問題だと僕は思います」 そうきっぱりと言い切るベリーズにそうかなぁ、と適当な相槌をうって俺は一息つく。 「後何人?」 「ラクハさんに指定された人はまだ後5人残ってます」 ベリーズのその言葉に小さなため息が俺の口からこぼれた。 BackNext [戻る] |