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「…はぁ……」

「…っ…ん……」

こんな至近距離で他人の、しかも男のこんな場面を目にする事になるとは微塵も思っていなかった。

外ではハイジ達が生死をかけて奮闘していると言うのに俺は何をしているんだと気持ちが折れそうになるが、これもハイジ達を守る為だと自分に言い聞かせる。

「…ね…ぇ…」

熱のこもった声をかけられ、俺は意識をチェシャ猫に戻す。

何も言わずにただチェシャ猫の行為を見続けていると、俺の右肩に置かれたチェシャ猫の掌が緩慢な動きで俺の肩を上下に滑った。

「その冷たい瞳には…俺はどう映ってる…?」

自身を煽る右手の動きと連動して熱を帯びていくチェシャ猫の眼差しからは、俺に何かを期待しているような、何かを求めているような、そんな意思が感じられた。

俺は図書室で読んだ本の内容を断片的に思い出しながら簡単に整理する。

さきほど知り得た情報から、チェシャ猫が求めているものを理解し俺は静かにため息をこぼした。

俺は意図的にチェシャ猫の下腹部に視線を移し、ゆっくりと視線を上へと持ち上げる。

「年下の、まだ会って間もない俺なんかに見られて興奮するのか」

体が高まって行くにつれて瞬きの回数が減り、目を閉じている時間が長くなりつつあるチェシャ猫に向かってそう言うとチェシャ猫はゆっくりと目を開いた。

マゾヒストとは肉体的精神的苦痛を与えられたり、羞恥心や屈辱感を誘導されることによって性的快感を味わったり、そのような状況に自分が立たされることを想像することで性的興奮を得る人間の事であるらしいが、

失神するまで鞭で打つ、棒で殴るなどの加虐を受けて満足するマゾヒストもいれば、それは暴行、虐待に過ぎないと感じるマゾヒストもいるとの事だった。

したがって相手の人間性を配慮し、嗜好についてある程度の妥協が必要になってくる訳だが、俺には肝心のチェシャ猫の人間性があやふや過ぎて何処までを求めているのかがわからない。

よって俺はチェシャ猫の表情や仕草からチェシャ猫の感情を想像してチェシャ猫を満足させなければならない。

「俺の目の前で自分を慰めて恥ずかしくないのか?…有り得ねぇ、変態だな」

眉をひそめ不快感を露わにして見せながらそう言うとチェシャ猫は切なげに眉を寄せた。

「…はっ…もっと…俺を罵って」

どう考えても喜んでいるとしか思えないチェシャ猫の表情を見て俺はリアルに軽く引いてしまった。






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あきゅろす。
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