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エドアンがこいつらを身を投げ出してでも守りたいと思っている事は十分にわかった。
きっと俺達が来るまでの間も大変な思いをしてこいつらを守って来たんだろうとも思う。
だが俺から言わせれば少し甘やかし過ぎのように思う。
チェシャ猫が怖いっつーのも、ノアにヤられるのが嫌だってのもわかる。
だが怖いからと言って何もせずにいる限りは自分を苦しめる地獄のループから永遠に抜け出せない。
「エドアンが居ないだけでみっともなく狼狽えてんじゃねぇよ」
どいつをこいつも似たような事を言い合っている囚人達に軽い苛立ちを覚え、思わず俺がそう零すと皆の目が俺の方へと向いた。
怪訝そうな顔で見つめてくる多くの目を不快に思いながら俺は言葉を続ける。
「確かにエドアンが居ない事で俺達に降りかかる禍いは計り知れねぇよ。
だが、本来なら刑務所にエドアンのような奴が居る事自体あり得ねぇ事だろ。
お前らはエドアンの存在を当たり前だと思っているからエドアンが居ねぇと何も出来ねぇ情けねぇ奴になっちまうんだよ」
冷めた物言いでそう言う俺にネバーランド内の空気が微妙に変化する。
「…てめぇらみたいに強い奴にはわかんねぇだろうよ」
「俺らはお前程イかれてねぇんだよ。何もわからねぇ新入りにそんな事を言われる筋合いはねぇ」
俺に対する不信感を露わにする囚人達に静かに眉を寄せる俺を見て、側で成り行きを見守っていたベリーズが慌てて間に入り込んで来る。
「みんな、落ち着きましょうよ!今は仲間内で揉めてる場合じゃないです!…確かに僕のように力の無い人間からしてみたらラクハさんの言葉にはトゲがあります。なので正直な所、僕はみんなの気持ちがわかります」
俺がベリーズのその言葉に口を開くと、それを遮るように素早くベリーズが言葉を紡いだ。
「ですがっ、僕はここ数日間ラクハさんと一緒に行動をして、ラクハさんが何もないのに人の事を悪く言うような人ではない事を知っています。
ラクハさんは多分Gleam holeで群を抜いて賢い人だと僕は判断しました」
そう言うベリーズの目が思いの外真剣で俺は変な緊張感を抱いてしまった。
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