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俺が勝ったら何してもらおうかなぁ、と笑みを浮かべながらシンの顔を覗き込む。
「…お前が勝つ前提で話してんじゃねぇよ。お前みてぇな得体の知れねぇ動物に2度も負けてやるかよ」
「あはは、そう来なくっちゃ。俺も負ける気ねぇから」
俺はそう言い返すと、俺から逃れるように顔を背けるシンに勝利を宣言する笑顔を向けた。
疑問が解決した所で再び読書に戻ろうとして、俺はある異変に気がつく。
「…ゼロ?何でそんなに怖い顔してるの?」
俺とシンの方を見て口を固く結んでいるゼロに動揺しながら俺はゼロの顔を覗き込む。
どんなに表情を隠しても俺にはわかってしまうんだ。
特に怒りや悲しみなんかの感情は。
ゼロは俺のその指摘に我に返ったのか戸惑ったような表情を見せる。
「怖い顔何てしてねぇ、呆れてたんだよお前に」
何かを隠すように早口でそう抗議するゼロを不思議に思ってしまったが、ゼロが怒っている訳ではない事を知って俺は大きく胸をなで下ろした。
「じゃぁ怒ってる訳じゃないんだね、良かったぁ。てっきりヤキモチ妬いてるのかと思っちゃったよ」
ふざけて俺がそう言うと、シンは怪訝そうな顔でゼロの顔を見つめ、ゼロは目を大きく見開いた。
驚いたような顔をして言葉を失っているゼロに俺は首を傾げる。
「…はは、あり得ねぇ。ちょっと頭冷やしてくる」
すくっと立ち上がり、引きつった笑みを残して行ってしまうゼロに俺は大きなショックを受ける。
「あり得ねぇって言われた」
冗談で言ったのに本気で返されて、しかもあり得ねぇって。
呆然とゼロの後ろ姿を目で追っているとシンに膝を叩かれた。
「お前よりもゼロの方がショック受けてると思うぜ」
どうして?
俺は目だけでシンに続きを催促する。
「…どうかすると気がつきたくねぇ事に気づかされちまった可能性がある。
まぁ臆測だから知んねぇけど。
最悪だな。そんな事になったら俺だったら3日は寝込むぜ。見た目は別として、こんな未知の生き物相手にマジになるなんて身の破滅だろ」
俺を下から上まで観察するように見つめながらそんな事を言うシンに俺は余計に混乱した。
よくわからないけどよくない事を言われた気がする、とそれだけ俺は直感的に悟った。
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