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◇◇
ーside HAIJIー
届きそうで届かない。
指先は触れているのに掴めない。
あぁ…じれったい。
つま先立ちで右手を必死に上へと伸ばしていると背後から影が覆い被さった。
「本も取れねぇのかよ、ダッセェ奴」
「あっシン!ありがとうっ、ついでにその隣の青い本も取って!」
高い所にある本を取ろうと奮闘していた俺を見かねてなのか、シンは俺の代わりに本を取ってくれた。
嫌そうな顔をしながらもシンは俺の要望を聞いてくれる。
悪人ヅラだし口も悪くてちょっと意地悪だけど、シンって結構優しいと思う。
シンから本を受け取り早速床に座り込んで本を読み始める俺を、シンは無言で観察し始める。
「見てよゼロ、愛らしいって可愛らしい事だって。ゼロには俺が可愛らしく見えるの?」
側でつまらなそうに本棚を見つめているゼロにそう声をかけると、ゼロは嫌そうな声を出し俺の方を振り返った。
「真顔で何つー事を聞いてくんだよ。何の話だよ」
「昨日の夜言ってたじゃん。びすくどーるみたいに愛らしい顔してるって」
俺の話の内容をくみ取れずに顔をしかめるゼロにそう返すと、ゼロは急にうろたえ始めた。
「べ…っつにあれは俺個人の意見じゃねぇ。一般論を言ったまでだ!」
「ふーん?俺よりゼロやベリーズの方がよっぽど可愛いと思うけどなぁ。可愛らしいの基準って何だろう」
1人では結論が出そうになかったのでシンに目で意見を求めてみる。
だけどシンは眉を寄せるだけで取り合ってくれない。
「…兄貴を手伝わなくていいのか?」
シンは兄ちゃんの様子が気になるのか、俺達のいる所からだいぶ離れた所にいる兄ちゃんとベリーズの様子をさっきからずっとチラチラとうかがっている。
そんなに気になるんなら様子見てくればいいのに。
「俺が必要になった時にちゃんと呼んでくれるからいいの。それに兄ちゃん以上の答えを出す事は俺にはまだ不可能だし」
本棚から別の本を引っ張り出しながらそう答えるとシンは無言で俺の隣に腰を下ろした。
ポケットからナイフを取り出しクルクルと手元で遊ばせ始めるシンを視界に入れながら俺は新しい本のページを捲る。
「あははっ見て見て、この小熊ゼロそっくり〜」
「馬鹿、それは熊じゃなくて猫だろ」
ゼロも退屈なのか俺の隣に腰を落ち着け、俺の手元を横から覗き込んでくる。
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