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「…ロゼさん、行きたくない奴なんてウチにはいませんよ。堂々とネバーランドの囚人いじめが出来るなんて機会、めったにありませんから。お気遣い本当にありがとうございます」
そう言ってチェシャ猫に頭を下げるワンの表情からは完全に恐怖が消え、変わりに不気味な笑みが浮かんでいた。
ハイジとのやり取りで警戒心を削がれてしまっていたが、ワンもまた厄介で危険なアリスの森の囚人の1人である訳で。
小百合と言う男が言っていた事を信じるのなら、こいつもイカレた奴なんだろう。
「と、言うわけだからシャワー浴びないでベッドの上で待っててねお兄ちゃん」
「シャワーを浴びないで…?…待てよ、それよりも何故俺なのか理由を明確にして行け。納得が出来ねぇ」
立ち去ろうとするチェシャ猫を阻止してそう尋ねると、チェシャ猫は頬に手をあて首を傾げた。
「いや、単純にシャワー浴びないでする方が好きなんだよねぇ俺。
何故相手がお前なのかと言う理由その1、お前がどSな天使様だから。
理由その2、エディがどう言う反応するか見たいから」
…理由その1は納得出来ねぇが理由その2は納得出来る。
心の隅で理由がエドアンだと知って安堵していると、チェシャ猫はわざとらしく照れ始めた。
「で…次が最大の理由なんだけど。俺の経験上サディストは基本変態だから、どSな天使様だとどう言ったアブノーマルなプレイが楽しめるのか興味深くて。楽しみにしてるからね、どSな天使様?」
チェシャ猫は何食わぬ顔で最後に俺を思いっきり不愉快にさせる発言を残し、上半身裸のまま足取り軽く階段を降りて行った。
「…俺達の運命はラクハの頑張り次第って事かよ。何つーか…、ついてるようでついてねぇよなお前」
慰めのつもりなのか、ゼロは微妙な顔で俺の顔を見上げてくる。
「…ついてねぇのはお互い様だろ。チェシャ猫と一緒にアリスの森の奴らもついてくるみたいだからな。とてもじゃないがお前らまで手がまわりそうにねぇ。俺はあの得体の知れない猫科の生き物だけで手一杯だ」
俺はチェシャ猫にかき回された頭の中を整理しながらぼんやりとチェシャ猫の後ろ姿を目で追う。
「チェシャ猫を1人で相手にしなきゃならねぇお前に守って貰おうなんて思わねぇよ。寧ろ…俺達がお前を守った方がいいと思うくらいだ。お前殺されるぞ。下手したら」
俺同様、チェシャ猫の降りて行った階段の先を見つめながらゼロは静かにそう呟いた。
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