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「それはそうと…」
そう切り出してチェシャ猫はくるっと体を反転させると俺の方に近づいてくる。
「聞いたよ〜?今日と明日エディが戻って来ないんだって?」
俺に近づきふにゃふにゃした笑みを浮かべるチェシャ猫に、背後でベリーズの小さな悲鳴が聞こえた。
俺の腕を掴むゼロの手にも力が入る。
「ノアや鳥人間がエディの居ないネバーランドを放っておく筈がないもんねぇ?ネバーランドにはエディの他に戦力になるような奴はいねぇし…大変だぁ」
一番大変で最悪な敵はお前だよ、とよっぽど言ってやりたかったがぐっと抑える。
この数日で若干ではあるがチェシャ猫に免疫がついてきた。
チェシャ猫の言葉を真面目に聞き入れるだけ無駄だ。
俺は、血がベッタリと附着した手で俺の頬を撫で、血をなすりつけてくるチェシャ猫に返す言葉を慎重に模索する。
「正直、俺個人の意見としてはエディのいないネバーランド何てつまんないと思ってるワケ。でも今回はいつもより楽しくなりそうな気がするよ。なぜだと思う?」
ベタベタと顔に這い回るチェシャ猫の手に眉をひそめながら取り合えずさぁな、と素っ気ない返事を返す。
「お前がいるからだよラクハ。ネバーランドはもう…以前のエディが居なきゃ何も出来ないヘタレなネバーランドじゃない。
冷静沈着で頭のキレるどSな天使様と可愛い歩く核爆弾がいるんだ。これはちょっと見ものだよねぇ」
「…エドアンもお前も俺を買い被り過ぎだ。俺に多くを望んで失望しても俺は責任を取れねぇ」
はっきりとそう言い切る俺にチェシャ猫は不満げに顔をしかめた。
「何でそんなにネガティブなのよお前。変な子だねぇ兄弟そろって。俺にとっても、ラクハが無能な人間であってくれた方が都合がいい事にはいいんだけど…それじゃつまんないしね」
チェシャ猫の言う都合のいい事にあまりピンと来ず、俺はそのまま聞き流す事にする。
まさかこんな所で俺達が頭を悩ませているアリスの森のトップのチェシャ猫に遭遇するとは思ってもみなかった。
しかもありがたい事に通訳もいる。
上手くいけばアリスの森からの襲撃を免れるかもしれない。
そんな俺の淡い期待は直ぐに打ち砕かれた。
チェシャ猫は何を思ったのか血まみれの上着をいきなり脱ぎ始め、呆気に取られている俺に上半身が剥き出しの体を近づけた。
「今夜夜這いに行くから楽しみにしててねお兄ちゃん」
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