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目を固く瞑りチェシャ猫のする事を素直に受け止めているワンの様子に気が済んだのか、チェシャ猫はワンから手を離した。
そのタイミングを見計らってハイジが口を開く。
「ロゼ、また誰かに嫌な事言われたの?」
怒りを抑えるような顔でそう尋ねてくるハイジにチェシャ猫は目を丸める。
「…うん、ちょっとね。俺のこのガラスよりも繊細な心を傷つける奴が多くて困っちゃうよ」
ハイジは心臓の上に手をあて、ふざけた口調でそう告げるチェシャ猫の腕を引っ張る。
チェシャ猫はハイジに促されるままに視線をハイジに合わせた。
「もう大丈夫だよ。俺はロゼがどんな事をしても嫌いになったりしないし絶対にロゼから逃げないから」
「…どうして俺にそんな事を言ってくれるの?」
不思議そうな顔でそう問うチェシャ猫にハイジは照れたように笑った。
「今のはいつも兄ちゃんが俺に言ってくれる事なんだ。俺がやらかしちゃった時なんかにね。それを聞くと俺はいつも嫌な事を忘れちゃうから、ロゼも嫌な事忘れられればいいなって思ったんだ」
チェシャ猫はハイジのその言葉を聞いて納得がいったのか、あぁ…成る程ね、と軽い相槌をうった。
チェシャ猫はハイジの額に自分の額をコツンとあてるといつものふざけた笑みを浮かべた。
「ハイジはいい子だねー。…さぞかしお兄ちゃんの教育の仕方がいいんだろうねぇ。
俺を本気で心配してくれるのはハイジくらいだニャー」
そう言ってハイジの鼻の頭をぺろっと舐めるチェシャ猫にハイジはくすぐったそうな笑い声をあげる。
「俺をいい子だなんて言うのもロゼくらいだよ」
ハイジが愉快そうに笑いながらそう言うとチェシャ猫は爆笑した。
チェシャ猫とハイジのこの光景は一見微笑ましいもののように錯覚してしまうが、ハイジの事をよく知る俺から見れば2人の会話の根本にあるものが危険で黒過ぎる為、とてもじゃないが微笑ましいとは思えなかった。
そんな俺の複雑な心境を察知したのかチェシャ猫は俺の方を見つめると嫌な笑みを浮かべた。
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