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ハイジはチェシャ猫のその言葉に安心したのかチェシャ猫を力強く抱きしめる。

「良かった、それならいいや」

そう言って体を離し、胸を撫で下ろすハイジをチェシャ猫は面白そうに笑う。

そんなチェシャ猫とハイジのやり取りに俺は静かに安堵する。

チェシャ猫は既に怒りを存分に発散してきた後なのか、俺達に殺意を向ける素振りはみられない。

チェシャ猫は不思議そうに俺達に視線をすべらせるとある人物の所で目線を固定した。

「…ここにいたのワンワン。探してたんだよ」

チェシャ猫のその言葉にワンの喉元が大きく上下する。

「お…俺何かしましたか」

恐る恐るそう尋ねるワンにチェシャ猫は小さく首を横に振る。

「その逆。しなかったんだよ」

眉を寄せて顔に附着している血を腕で拭うチェシャ猫に、ワンは慌ててポケットに手を突っ込み布を取り出すとチェシャ猫に差し出す。

チェシャ猫はワンから受け取った布を顔にあてながらワンを静かに見つめる。

「一週間前くらいに俺が頼んだ事覚えてる?見るのも嫌な奴がいるって言ったじゃん俺、お前にさぁ」

「あ、はい。そいつならその日に二度とロゼさんのお目に触れないように片付けさせましたけど」

狼狽えながらそう返すワンはチェシャ猫が眉をひそめるのを見て何かを悟ったのか、顔面蒼白にした。

「もも申し訳ありませんっ!今から始末して来ます!!」

チェシャ猫は血相をかえて駆け出そうとするワンを寸前で引き止める。

「いいよもう。今度あれに会う事があってもワンワンは何もしなくていいよ。あれで生きてたら奇跡っつーか笑えるから」

チェシャ猫は首の前で人差し指を横に引く動作をして顔に笑顔を張り付けた。

ゆっくりとした動作でワンの首に右手を押し当てるチェシャ猫にワンの顔が恐怖で引きつる。

「ワンワンは気がきくし、いつも俺が過ごしやすいように先に手を回してくれてるのも知ってる。
何よりワンワンはパイプとして役に立ってくれてるし。だから俺は別にお前の事嫌いじゃねぇの」

チェシャ猫はそこで一度言葉を切ると、ワンの首に押し当てている右手の指をワンの顎下に持っていく。


「…俺をガッカリさせないで」

まるで猫にそうするようにワンの顎を下から優しく撫でるチェシャ猫に確かな殺気を感じた。





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