210 「小百合、これ以上ゼロを苛めたら許さないから」 「許さないってお前がか?別に許してくれなくたって俺は構わねー」 小百合と言う男は強い口調で威嚇し睨みつけるハイジを鼻で笑うだけで態度を変えようとはしない。 「ちゃんと聞いてよ。いい?二度とゼロに酷い事しないって約束して」 「嫌だね。お前が変わりをするってんなら考えてやってもいいけどな?」 ハイジを嘲笑いまったく話を聞く気配のない小百合と言う男にハイジの目の色が変わった。 「…兄ちゃん、別に殺したりしないから止めないでね」 「あぁ。まだ話の途中だ、なるべく穏やかに早く済ませろ」 俺がそう返すとハイジは直ぐにさっき小百合と言う男がしたようにテーブルに乗り上げ男の胸倉を乱暴に掴む。 「なんだぁ?俺とやろうってのかよお嬢ちゃん」 「小百合、俺が見逃すのは一度だけだよ。そして忠告するのも一度だけ」 「はぁ?何言ってんだお前」 聞く耳をもとうとしない男にハイジは眉を潜めると男の胸倉をしっかりと掴み直し、男に乗りかかるように何の躊躇いもなく前へと倒れて行った。 派手な音を立てて椅子ごと床へと倒れ込んだ白髪の男は頭を強打したらしく頭を抱え痛みに顔を歪め呻く。 「…いって…ぇっ!?何しやがんだテメェっ……そんなに俺にぶっ殺されてぇのかよ!あぁ?!!」 ハイジは男の上に跨った状態で、暴れ自分に攻撃しようと腕を振り上げる男の腕を冷静に掴み床に抑え付けると男の顔を上から見下ろした。 椅子から投げ出され床に倒れ込んだ男の上に跨り、自分より大きな男を抑え込むハイジとそんなハイジを抗(あらが)えないでいる男の光景は何とも異様だった。 小百合と言う男はどう考えても普通じゃない自分の状況に焦ったようにもがきハイジに向かって暴言や汚い言葉を吐きまくる。 ハイジはそんな男の耳元に顔を近づけると、ハイジの奥底に眠る狂気を滲ませた声で男に語りかけ始めた。 「今から俺が言う事をちゃんと聞いてね小百合。 今度ゼロに何かしたら、ゼロを泣かせるような事をしたら、ゼロと同じように俺が小百合を泣かせてやるから。 ゼロにした酷い事や怖い事を全部そっくりそのまま俺が小百合にするからね」 だからもうゼロに酷い事しないであげて、と最後に優しく言い聞かせ立ち上がるハイジを男は呆然と目で追うだけで止めようとはしなかった。 BackNext [戻る] |