202 目の前の意外とデカく体格のいい男の顔を見つめながら慣れ親しんだ軽い脱力感に襲われていると、男は視線を一度ハイジに移した。 どうやらハイジの言った事が堪に触ったらしかった。 「…今のはどう言う意味だぁ?何か?俺がこの糞眼鏡より弱いとでも言いてぇのかよガキの分際で」 怒りを露わにして睨みつける男にハイジは眉を八の字にすると困ったような顔で男を見つめ返した。 「うん。だからあんまり兄ちゃんを怒らせない方がいいと思うよ。 …って言うか俺多分お兄さんが思ってるよりもガキじゃないと思うんだけどなぁ。 お兄さんも兄ちゃんから見たらガキだと思うけど」 …前言撤回だな。やはりハイジのこれは問題だ。 火に油を注いでどうする。 冷静にそんな事を言ってのけるハイジを補助するようにベリーズも口を開く。 「因みにハイジさんは小百合さんと同い年ですよ」 気をきかせて放ったベリーズのその言葉に白髪の男は思いっきり顔をしかめ、頬杖をついて成り行きを見守っていたシン・アベルは目を見開いた。 「何だ〜そうなら早く教えてよー。よろしくねー小百合」 「いきなり馴れ馴れしく呼び捨てにしてんじゃねぇよっ糞ガキっ!!俺を騙そうなんて100年早ぇーんだよっ」 俺の胸ぐらを掴んだままの状態でハイジと口論を始める男に俺は取り敢えずそのまま動かず様子を見計らう事にする。 しかし…まさかハイジと同い年とは思わなかったな。 並んだらハイジは子供に見えるんじゃないのか。 男の顔が怒りでどんどん歪んで行くのがわかり俺は警戒を強める。 「…てめぇには後で俺が地獄を見せてやる、今はこっちが先だ。てめぇが強いと思っている男がやられる所を見とくんだな」 男はハイジを鼻で笑うと再び視線を俺へと向け拳を構えた。 ここで抵抗しても面倒事を増やすだけだ。 殴って大人しくなるんならその方がいい。 スローモーションで俺の顔目掛けて飛んでくる拳を静かに見つめていると存在感のある野太い声が耳を掠めていった。 「…その辺でやめておけ小百合。まだ話の途中だ。それと…ハイジがお前と同い年だって言うのは本当だ」 ノアのその言葉に違和感を感じノアの方を見ると、ノアは俺の顔を見ながら小さい箱から3本目の煙草を取り出し口にくわえると口端を緩く上に持ち上げた。 BackNext [戻る] |