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「しかしまー噂には聞いてたがすんげぇ上玉だな、目がチカチカするぜ。何で食わねぇんすかノアさん」
ハイジの顔をまじまじと見つめたまま不思議そうにそう尋ねる白髪の男にノアは面倒くさそうに口を開く。
「黙ってろ小百合(さゆり)。お前にもその内わかる」
ノアがそう返すと小百合(さゆり)と言う男はさーせん、と流すような軽い謝罪をして天井を仰いだ。
「…それで、用件はなんだラクハ。まさか本当にこいつらを貢ぎに来たんじゃねぇんだろ…?聞いた所によると大変みたいじゃねぇか。2日間フック船長が居ないんだってなぁ」
嫌な笑みを浮かべながら白々しくそんな事を言うノアのその言葉により、エドアンが独房に入れられたと言う事を知らない囚人達は歓喜の叫び声を上げた。
「さっきシン・アベルにハイジを今日1日貸して欲しいと言われた。だからアンタの真意を聞きに来た」
胃に食べ物を通しながらそう言うとノアは若干驚いたように眉を上げ一度シン・アベルの方を見てから口を開いた。
「真意も何も…俺はただハイジとじっくり話がしてみたいってだけだ。見ての通りウチの連中には花がねぇ。ハイジがウチに遊びに来るってだけで随分華やかになるってもんだ」
「あー確かに、何でウチには悪人ヅラしか居ないんすかね?ネバーランドにはこんな美味そうな奴らが転がってるってのに。何気にアリスの森にも可愛いツラしたのが結構いんだよな。もれなくイカレてやがるけど、大体トップのチェシャ猫からして…」
ノアの言葉に返事をするかのように聞いてもいない事をペラペラと話始めた小百合(さゆり)と言う男を咎めるようにノアは男の名前を呼ぶ。
すると白髪の男は再びさーせん、と流すように軽い謝罪を口にし天井を仰いだ。
「…つまりはハイジに手を出す気はないって事か」
2本目の煙草を取り出し口にくわえるノアにそう言うとノアは嘲笑うように首を左右に小さく振った。
「そうは言ってねぇよ。どうなるか何て誰にもわからねぇだろ?残念だが約束は出来ねぇなぁ」
そう言って煙草に火をつけゆっくりと煙を吐き出すノアに俺は内心安堵していた。
ノアがハイジを気に入っているのは間違いない。
そしてハイジを何としてでも自分の下に置いておきたいと思ってると言う事もわかった。
ノアがハイジを欲しがる程俺の交渉に応じる確率が高くなる。
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