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「今回みたいに酷いのは珍しいですよ。リンチを逃れる術が無い訳じゃないですし」
「要は1人で居なければいい話だからな。入所した日に仲間に加わってしまえば話は変わってくる。俺とベリーズも船長が船長じゃなかったら今頃生きてねぇだろうな」
ゼロが神妙な面持ちで吐くその言葉にベリーズは深く頷く。
…成る程な。
もし俺達がそれぞれ違うエリアに配属になっていたらかなり危ない事になっていたと言う訳か。
ネバーランドに、いやエドアンの存在に感謝すべきなんだろう。
「船長が戻って来るのは遅くなると思うのでラクハさん達は先に休んでください」
そう言って俺達に自分達の房に帰るよう促すベリーズに、俺はベリーズが見張り役であった事を思い出す。
「1人で見張りは大変じゃないのか?」
ベリーズ1人残して中に入る事に気がひけてそう尋ねる俺にベリーズはとんでもない、と首を振った。
「休んでもらわないと僕が困ります!アリスの森の囚人やノアの箱船の囚人が乗り込んで来たらどうするんですか!ラクハさん達には万全な状態で戦ってもらわなければっ!」
…俺とハイジはいつの間にネバーランドの戦闘要員になったんだ?
「いざと言う時はとっても頼りにしてますから。
僕は逃げます」
愛嬌のある笑みを浮かべながらそれが当然であるかのようにトンズラ発言をするベリーズに何も言えなくなり、俺達はベリーズを入り口に残したままネバーランドの中へと入った。
ハイジと別れ、自分の房へ向かおうとしていると後ろから服の裾を引っ張られた。
「…ちょっといいか?」
振り返るとそこにはどこか緊張した面持ちで目を泳がせるゼロの姿があった。
「構わねえけど…」
またハイジが何かやらかしたのかと不安を過ぎらせる俺とは裏腹に、ゼロはキョロキョロと周りを見渡し壁際へと俺を誘導する。
そんなゼロの様子に他人に聞かれたくない話なんだと悟った
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