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ここの囚人達はそこまで馬鹿ではないらしいな。

全員にこの手が通用するとは思わないが暫くはこの方法で様子をみるか。

この方法が俺が考えた中でお互いにとって一番いい方法だ。

ハイジの治療には時間がかかる。

だから少しずつ馴らしていかねぇと。


「友達が増えたよ兄ちゃん。あのお兄さん達いい人達だね」

「そうだな。だけど油断するなよ、好き嫌い関係なく襲いかかってくる奴だって居る。そう言う奴と遭遇した時は逃げろよ」

「兄ちゃんも逃げるの?」

「時と場合によってはな」

俺が当たり前のようにそう返すとハイジは可笑しそうに笑った。

「兄ちゃんが逃げるとこ俺想像できないや。兄ちゃんが逃げたくなるような場面ってどんな場面なんだろう?」

ハイジのその問いに頭を巡らせてみたが直ぐには浮かんで来なかった。




◆◆

「君は昨日の常識ある囚人…っ!」

医務室に足を踏み入れ、机の前で手を動かしていた骨のような医者に声をかけると医者は机の上に山積みにされた書類を盛大に床に落とした。

そんな医者に不信感を抱きながらもハイジの包帯を変えてくれるよう頼むと骨のような医者は快く引き受けてくれた。


…それにしたってここの囚人達は余程暇なのか、好奇心旺盛なのか。

医務室に辿り着くまでの間に目が合った囚人達にことごとく絡まれ、

何故かそいつらのほとんどが俺のバンダナと眼鏡に吸い寄せられるように手を伸ばしてきた。

そのお陰で対処はかなり楽だったがどうにもふに落ちない。

そんな事を考えながら医者がハイジの包帯を取り替えている間、床に散らばった書類を拾っていると背後から規則性のある癖の強い足音が近づいてくるのがわかった。



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