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俺は被害を最小限にするために、ハイジに捕まってしまった男以外の囚人達を力を加減しながら倒れさせた。

「ハイジ、やめろ」

俺はハイジにナイフを向けた男の上に跨り、男の顔を一心不乱に殴りつけているハイジを抑えやめさせる。

腕で顔を庇い、やめてくれ…と弱々しい声でハイジに懸命に訴える男を気の毒に思いながら俺はハイジを後ろからしっかりと抱きしめる。


「なんで止めるの兄ちゃん。

このお兄さん俺の事嫌いなんだよ?

母さんみたいになる前に殺さないと今度こそ俺が殺される」

体勢を立て直していた男達は俺達のやり取りから異様な空気を読み取ったらしく、はっきりと恐怖を瞳の奥に映し出していた。

「誰もお前を嫌いだなんて言ってねぇ」

「俺を嫌いじゃない人が俺にナイフ向ける訳ないじゃん」



完全に恐怖の色を露わにしている男達に視線を滑らせた後、俺はハイジに言い聞かせる。


「こいつはお前を殺そうだなんて思ってない。

ナイフをお前に向けたのはここでの新入りに対する挨拶みたいなもんなんだよ。

お前を殺したいんじゃなくてお前と友達になりたいんだ」

俺が嘘を本当にする為男達に目配せすると男達は空気を読んで直ぐに激しく首を縦に振った。

いまいち納得していない様子のハイジに、シン・アベルもそうだっただろ?と念を押すとハイジは納得したのか穏やかな顔で微笑んだ。

「なんだぁ、そうだったんだね。

ごめんね、痛かったでしょ?

わかってたら加減したんだけど…俺早とちりしちゃった」

またがっていた男の上から降りて、男が上体を起こすのを手伝いながらハイジは眉を下げた。

「本当にごめんね、俺の事も殴っていいから。まだ…俺と友達になってくれる?」

血で濡れ醜く腫れ上がった男の顔を両手で優しく包み込んで不安そうにそう尋ねるハイジに、

男がどう言う反応をするのか不安がよぎったが男は他の男達同様激しく首を縦に振った。

「よかったー、許してくれないと思ったぁ」

嬉しそうに満面の笑みで笑いかけるハイジに男の顔が血ではなく別のもので赤く染まる様子を見て俺は小さく息を吐きだした。


男達全員からしっかり名前を聞き出し、ハグと握手を繰り返し友達を増やしていくハイジに安堵しながら俺は壁に寄りかかりそれを見守った。



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あきゅろす。
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