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その後すぐにエドアン達と別れた俺達はエドアン達とは逆方向へと足を進めた。
医務室が食堂の反対側(向かい側)だった事もあり、俺達は食堂を目指す。
「兄ちゃん、どうせならちょっと探検して行こうよ」
身も心もすっかりリフレッシュした様子のハイジは俺の周りを動き回りながらリズムを口ずさんでいる。
「今度な。これ以上興奮すると余計に眠れなくなるぞ」
絶対だからね、と俺に約束させるハイジに念の為にエドアンに詳しい情報を聞いた方がよさそうだな、と思いを巡らせていると目の前に壁が現れた。
「これはこれは…今話題のお2人さんがお通りだぜ?」
「すっげぇ…。作りもんみてぇな面してやがる」
「弟がこれなら兄貴の方も期待できるぜ」
俺達の進路を塞ぐのは5人の囚人。
壁と言っても全員俺より身長が低い。だから障害物と言った方がいいのかも知れない。
「ねー、お兄さん達もお風呂入った?俺あんな広いお風呂に入ったの初めてなんだ〜」
まるっきり危機感を抱く事なくトンチンカンな事を言っているハイジを放っておきながら、俺は俺達を取り囲む囚人達を観察する。
赤いナンバープレートって事はエデンの囚人か。
「マジ可愛いなぁ…。ヤっちゃっていいか?」
「いきなりかよ、お前どんだけ飢えてんだよ」
ゲラゲラと笑い声をあげる囚人達の声を不快に思いながらハイジへと手を伸ばす囚人の腕を寸前で掴む。
「ハイジに何かしてみろ。
殺すぞ」
ギリギリと掴んでいる手首を締め付けながら抑揚のない声でそう告げる俺に、囚人達は一瞬停止した後再び堪にさわる笑い声をあげた。
「…やれるもんならやってみろよ新入り。これを見てもそんな事が言えるんならな」
そう言って勝ち誇ったように懐から取り出されたものは覚えも新しい30cm程度の刃物。
シン・アベルが持っていた物とは形状は違ったがナイフである事には変わりなかった。
「こいつで痛い目に合いたくなけりゃ俺達の言う事を聞くんだな」
自分達が優位な立場に居ると優越に浸り俺達ににじり寄ってくる囚人達に思わずため息が出てしまった。
馬鹿だな、本当に。
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