[携帯モード] [URL送信]
134
信用出来る訳がない。

気に入られる事と安全はイコールではない。

俺達の場合少しの油断が何を引き起こすかわからねぇ。

人を信じ過ぎるハイジの分も俺が疑ってかからねぇと。


「それならエデンに来るかハイジ。お前なら俺の房に喜んで泊めてやるぜ?」

空気をよまない鶏に呆れながらハイジの方を見ると予想を反してハイジは不満と落胆が合わさった表情のままだった。


「また今度ね。鶏さんの所に行くとなんか精神的に疲れそうだし」

「ハイジてめぇ…年上を舐めんなよ?」

「舐めてねーもーん。遊んでるだけー」

ハイジを捕まえようと躍起になるリズ・オーエンと笑いながら逃げ回るハイジの楽しそうな姿を見て俺は若干の安心感を覚えた。

もしかしたら…

もしかしたらだが…

これから先何が待っているにせよ、ここは俺達にとって地獄では無いのかもしれねぇな。


「エデンに行くのは止めないんだな。リズは信用してるのか?」

意外だ、と言った顔で俺の顔を見つめるエドアンに俺はなぜだか気まずさを覚え、視線を反らした。


「お前の次に安全な奴なんだろ。

奴は信用してねぇけどお前は信用する事にしたからな」


よく考えたら今まで俺に親友なんてものは居なかったし、友人と呼べる人物も居なかった。

とてもじゃないがそんな状況では無かったからな。


そんな俺に契約と言う形であれなんであれ親友が出来るとはな。


「俺も信用してるぜクララ。頼りにしてるぜ相棒」

あっけらかん、とそう返し、嬉しそうに笑っているエドアンに感傷に浸っていた自分が馬鹿らしくなり俺は白い湯船から体を上げた。

一足先に着衣を済ませハイジが服を着るのを待っていると、全く服を着る素振りを見せずタオル一枚でウロウロしていた鶏が俺の元にやって来た。


鶏は長椅子に座っていた俺の直ぐ隣に腰を降ろした。



「…ハイジのアレって虐待か?」

「まぁな」


素っ気なくそう返す俺に鶏は珍しそうにハイジの姿を目で追う。

「だからか。ノアの箱船の連中の様子が妙だったのは」

「想像は出来る。どん引きしてたんだろ。ランダムな傷なら言い訳も出来るが、ハイジの傷や火傷の痕はどれも故意的に付けられたのが丸分かりだからな」

ハイジから視線を反らさずにそう言う俺に鶏は確かに、と茶化すような笑みを溢した。






BackNext

34/99ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!