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「助けないんだな」

エドアンなら真っ先に争いを止めに行きそうなものなのに素通りしていくエドアンにそう尋ねるとエドアンは苦笑いした。


「やられてんのがネバーランドの囚人なら助けてやれるが、他のエリアの囚人を助ける事は俺には出来ねぇんだよ」

「何か特別な理由があるのか?」

力でエドアンが他の囚人達に負けるとは思えない。

「そう言うルールなんだよ。何か問題が起きた時に口を出していいのは当事者のエリアのトップだけ。

さっきやられてたのはアリスの森の奴だから助けられるのはチェシャ猫だけって訳だ。

ボコってた方のエリアのトップが止めるのも有りだがそれは無いに等しいな」


そのルールだとあの囚人はチェシャ猫の気が向くまで助かる事は無いんだろう。

自分でどうにかしようって言う姿勢が全く感じられなかったからな。

助けを求める奴の気がしれねぇ。

助けなんて来る訳がねぇのに。


「ちょっとここで待ってろ」

エドアンは大浴場の入り口の前で俺達をストップさせると1人中へと消えて行った。

そんなエドアンの行動を不思議に思っていると暫くして中からぞろぞろと囚人が出てきた。


囚人の波が途絶えた所でエドアンに中に入るように言われたので中へ入り脱衣場に足を踏み入れると俺達以外誰も居なかった。

「…追い出したのか」

「当たり前だろ?お前を他の奴に見せたくねぇからな」

エドアンの心遣いは素直に嬉しかった。

エドアンが貸し切りと書かれた水色の立て札を浴室の扉の前に設置すると皆服を脱ぎ始めた。

「船長が貸し切りにするなんて珍しいんですよ。船長はあんまりトップの権力を振りかざすタイプじゃないんで」

上着を白黒のロッカーに放り込みながらベリーズはそう教えてくれる。


「普段はしないのか?」

「はい。きっとハイジさんとラクハさんが居るからですね。

リズやノアはよく貸し切りにしてますよ。チェシャ猫の場合は立て札をしなくても直ぐに貸し切りになりますけど」

ベリーズのその言葉に俺はチェシャ猫と同じ湯船に浸かっている所を想像してみる。


…疲れを癒す為の入浴が疲れを増大させる入浴になりそうだな。

立て札無しで貸し切りになる理由がすんなりと飲み込めた。



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あきゅろす。
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