125 ハイジがノアの居るC班に行く事が決まった時点で思い付く限りの良くない展開を思い浮かべた。 だからハイジが無事に戻って来た時には心の底から安堵した。 俺はその事に安心して一番重要な事を確認していなかった。 正直な所俺はハイジが襲われる事自体は大して心配していない。 襲われた所でハイジが精神的ダメージを受けるとは到底思えない。 寧ろ自分から楽しみに行くタイプだ。 それに…ハイジの体を見て尚そんな気になる奴はまず居ないだろうからな。 俺が心配しているのはハイジが襲われ、服を無理矢理脱がされた時。 相手のハイジの体を見た後のリアクションが問題なんだ。 目を背ける。 顔をしかめる。 気持ち悪がったり罵り馬鹿にする分には問題無い。 問題なのはハイジを憐れみの目で見る事だ。 それもハイジの事を思ってする憐れみではなく、自分よりも不幸な者に対する優越感から生まれるハイジを見下した憐れみ。 今のハイジは父親と同じ目をして自分を見る人間を許す事が出来ない。 「ハイジ…今日の労働で、ノアや他の囚人達にされた事で怖い思いをしたり怒りを覚える事があったか」 動きを止めてハイジにそう尋ねるとハイジは頬をテーブルにつけて俺の顔を見上げた。 「んー…、ノアのおじさんが他の囚人さん達と同じ反応してたらちょっと危なかったかも知れない。 あの目大っ嫌い俺」 そう言って悔しそうに下唇を噛んで俺にもどかしい怒りを訴えてくるハイジの頭を俺は撫でてやる。 「…そうか、我慢したんだな」 褒めるようにハイジの髪をグシャグシャとかき混ぜてやるとハイジは無邪気な笑みを溢した。 何かハイジの気が晴れる事があればいいんだけどな。 「ここには気晴らしになるような場所は無いのか」 俺が正面の3人にそう問いかけると元の穏やかな表情をしたエドアンが口を開いた。 「色々あるぜ。図書室にトレーニングルーム、屋上にも出られるしな」 思っていた以上の答えが返って来たが、ハイジの食い付きがよくない。 やっぱり刑務所では限界があるな、と諦めかけているとベリーズが思い出したように口を開いた。 「そうだ、大浴場に行きましょうよ!」 「そう言えば最近忙しくて連れてって無かったもんなぁ。俺も疲れを癒したいし行くか」 エドアンがそう言うとベリーズはA班は疲れますもんね、と相づちを打った。 BackNext [戻る] |