123 俺はチェシャ猫の目を見てはっきりと自分の意志を口にする。 「俺にお前と寝る気は更々ない。お前も俺なんかに声をかけずにもっとマシな奴に声をかけろよ。 何を思い詰めてるかは知らねぇけど俺に手を出すなんて自暴自棄になる事はねぇだろ」 俺が説得するようにチェシャ猫の目を見てそう言うと何故か食堂内が沈黙に包まれた。 言葉を発しない目の前のチェシャ猫に疑問を抱いていると横からエドアンに抱きつかれた。 「クララ、お前悪い方向に勘違いしてるぜ」 哀しそうな顔でそう言って俺を抱きしめるエドアンに硬直しているとチェシャ猫が弾けるように笑い始めた。 「俺別に思い詰めてねぇし、つーか自暴自棄ってなぁに〜?!まさかこんな断り方されるとはね、俺を心配するの何てラクハ位だぜ?」 愉快そうに軽い笑い声を上げるチェシャ猫とよしよしと宥めるように抱きついたまま俺の背中を撫でるエドアンに戸惑ってしまう。 取り敢えずエドアンを引き剥がしながら頭を捻っているとチェシャ猫が顔を覗きこんできた。 「…てっきり賢いお兄ちゃんの事だから断らないと思ったんだけどなー?」 チェシャ猫には俺の予想を反して誘いを断った事を全く気にする素振りは無い。 それが反って不気味さを与えた。 俺はそんなチェシャ猫を警戒してハイジの側へと移動する。 「そんなに警戒しなくたってお前らには何もしねぇって。言っただろ?綺麗なものと自分に似ているものは好きだって」 そう言って途中で言葉を切りチェシャ猫は視線をエドアンの方へ向けた。 「…エディの大事なお兄ちゃんを俺が奪っちゃうって言うのは凄く楽しそうだよね。 それに俺自身もラクハに凄く興味があるし、これから退屈しなさそうで嬉しいよ」 ふにゃっと柔らかい笑みを浮かべながら穏やかにエドアンを挑発するチェシャ猫にエドアンの表情は険しくなる。 「ねぇラクハ、エディよりも俺の方がお前らを理解してやれるよ? 俺の物になってよお兄ちゃん」 「俺は誰の物にもならない」 そう即答する俺にチェシャ猫は口端を吊り上げる。 「まぁ俺はいつでもウェルカムだからネバーランドに飽きたら遊びにおいで。ラクハとハイジなら喜んでアリスの森に歓迎するよ」 チェシャ猫は最後に俺とハイジにそう言い残すと俺達のテーブルから離れて行った。 BackNext [戻る] |