111 「ありがとうノアのおじさん。これだけゼロ頑張ったんだからもうゼロに酷い事しないであげてね。それじゃぁおじさん、俺達仕事に戻るから」 ノアのおじさんにそう言ってゼロの腕を掴んで出て行こうとするとおじさんに呼び止められた。 「何?まだ用事があるの?」 早く薄暗いガレージを出て明るい外へ行きたくて足踏みをする俺にノアのおじさんは思ってもみなかった言葉を吐いた。 「お前は逃がさねぇよ。逃してやるのはゼロだけだ」 その言葉を聞いて俺の上へと向かっていたテンションは谷底へとダイブした。 えー…?そう言う事なの? うぅ゛ー、俺ってばまだまだ詰めが甘い。 これが兄ちゃんならもっと賢く出来るんだろうなー…。 俺はガックリと肩を落とし盛大な溜め息を吐き出した。 「ゼロ、先に外に出てていいよ。多分外の方が安全だから」 俺がそう声をかけてもゼロは表情の無い顔で立ち尽くしたまま動こうとしない。 「ここまで来たら付き合うぜ。いっその事俺を殺してくれ」 「…何もそんなに自虐的にならなくても。ゼロ可愛いかったよ?」 ゼロは俺のフォローにも無反応。 余程ショックだったんだなぁ。 俺は一応ゼロの意見を尊重し、無理に帰す事はしなかった。 「ハイジ、こっちに来い」 俺にそう命令するノアのおじさんに少し腹立ちながらも後から兄ちゃんに褒めて貰う為に何とか耐え、おじさんの直ぐ目の前まで足を進めた。 「えっ…ちょっと何?!」 急に腕を掴まれノアのおじさんの方へ引き寄せられると膝に座らせられた。 俺はおじさんの行動の意味を理解しようと必死に頭を働かせた。 この体勢から連想出来る事は…、あぁそうかわかった。 「おじさん俺の父さんになりたいんでしょ。 嬉しいけど止めた方がいいよ?」 真顔でそう忠告する俺に、事の成り行きを見守っていた囚人さん達はポカンと口を開き、 俺の顔に手を伸ばしていたノアのおじさんの動きが止まった。 「あれ?違うの?」 キョロキョロと皆の顔に視線を移して不安になる俺にノアのおじさんは小さな笑みを溢した。 俺はおじさんの大きな手で顔を上に向かされ必然的にノアのおじさんの顔を見つめる。 「何だ、お前父親が恋しいのか?」 馬鹿にしたような顔でそう尋ねてくるおじさんに俺はキッパリと答える。 「まさか。存在している事すら許せないよ。 まぁ、だから殺したんだけどね」 BackNext [戻る] |