106 「そんなの当たり前じゃねぇか、好きな奴がいたら変態だろ」 まぁそう言われたらそうなんだけど。 俺の願いも虚しくしっかりと俺もゼロ同様に羽交い締めにされてしまう。 むー…嫌だって言ってるのにー。 自分達の方が明らかに強い立場にいると言う事を理解した上でこう言う卑怯な事するなんて最低だ。 「はーなーしーてーよー!!別に逃げたりしないからさぁ。ねぇってばぁー」 知らない囚人さんの腕の中でバタバタと暴れていると、俺を好奇な目で見ていた周りにいた囚人さん達は表情を変えた。 まるで奇妙なものを見るような目で俺を見つめてくる。 そんな囚人達の反応にノアのおじさんが口を開いた。 「それは強がっているだけなのか?それとも状況が理解出来ない程に馬鹿なのか?」 どうして皆、怖がらない事を変だと思うのかな。 俺にとっては、大勢の犯罪者に取り囲まれて今にも犯されそうなこの状況は怖い内に入らない。 「俺馬鹿じゃねーもん!って言うかいい加減にしないと俺怒るよ」 そう言って頬を膨らませ抗議すると、ノアのおじさんは俺を拘束している囚人に俺を解放するように命令した。 ノアのおじさんは何か考えるように視線を少しの間宙にさ迷わせる。 「怖くねぇのかハイジ、こんな状況で。今からどんな目に会うのかゼロに教えて貰えばさすがにわかるか。 お前らゼロを存分に気持ちよくさせてやれ」 ノアのおじさんのその号令でノアの箱船の囚人達は歓喜し一斉にゼロに群がった。 囚人達の背中で完全に姿が見えなくなる寸前に見たゼロの顔は諦めたように表情を失っていた。 そして俺の視線に気付いた僅かな時間。 ゼロの口が微かに動いた。 “逃げろ、今のうちに” 確かにそう読み取れた。 俺はそんなゼロの様子に胸が締め付けられて涙が出そうになる。 違うよゼロ。 俺の心配なんかしなくていい。 そしてどうしようも無い事だと諦める必要もないんだ。 「お願いおじさん、今すぐ止めさせて。 ゼロに酷い事しないでよ」 俺が真っ直ぐにノアのおじさんの目を見て真剣にそう訴えてもおじさんは俺を鼻で笑うだけだった。 BackNext [戻る] |