短編小説
教える時は正確に・おまけ2
「あれ、ヴィヴィオ嬉しそうだね?」
いつものお散歩の時よりも楽しそうに歩いてたから、つい聞いたんだ。
「うん!今日はパパ来るの!」
教えてくれたヴィヴィオは本当に嬉しそうで、あたしも嬉しくなっちゃったけど、考えてみたらあれが始まりだったんだよね……
けど、そんな事当然知らなかったあたしは
「ティア、ヴィヴィオのパパって…」
「あの人でしょ?“魔法は使えない”はずの“一般人”(って言い張ってる)の人」
一緒にいたティアにコソっと聞いちゃったけど、うん。やっぱりあの人だよね。
ティアと無茶した時は恐かったなぁ…………
「って、あの人魔法使ってたじゃん!」
「知ってるわよ!けど、本人が「魔法使えませんよ。魔力無いですから。反応ないでしょう?」って言ってたのよ。探っても本当に魔力感じないし」
「スバルおねーちゃん?ティアおねーちゃん?」
どういうことか訊こうと思ったら可愛い声が……あ、ヴィヴィオの事忘れてた…
「ご、ごめんね。…そっか、パパ来るんだ?」
「うん!」
実は碌に話したこと無いんだよね。………初めて声聞いたのがアレなんで恐くて遠くから見るのが精一杯で……
けど、ヴィヴィオがこんなに好きなら優しい人なのかな?
「ヴィヴィオ、パパに会えるのそんなに嬉しいの?」
「うん!ママ達も大好きだしまいにちあえるけど、パパはまいにちじゃないからうれしいの!」
「パパの事大好きなんだね」
思わず呟いた感想に、ヴィヴィオはすっごい笑顔で頷いて、それだけで大好きなんだって凄く分かった。
「ねえ、スバルおねーちゃん、ティアおねーちゃん。どうしたらパパいつもいっしょにいてくれるかな?」
その笑顔がちょっと曇って、それから真剣な顔でヴィヴィオが訊いてきた。
確かに、大好きなパパなら一緒にいたいよね。
あの人、たまにしか見かけないし。管理局の人じゃないからかな?
見かけた時って部隊長室で書類整理してたりフェイトさんの所(=執務官室)でお茶してたり休憩所でなのはさんとあたし達の教導資料見つつ話してたり、屋上でなのはさんや部隊長にデコピンしてたり、あの時はフェイトさん蹲ってたから先にされたんだろうな…あれ?ホントに一般人??そういえば前に事務の制服着てたような…あれれ???
「パパはなんて言ってるの?」
なんか、どんどん疑問が湧いてきたあたしに代わってティアがヴィヴィオにきいた。
うん、まずがあの人がどう思ってるかだよね。
「あのね、“ここはしごとばだし、ぼくはきょくいんじゃないからね。いっぱんじんがほんとは来ていいばしょじゃないんだよ”って。それに“ぼくはきょくにはいるきもない、ヴィヴィオのママ達のむかしからのしりあいってだけだから、ここにいることもないしょなんだよ”って言ってた」
「そ、そう…」
「あ、あはは…」
ヴィヴィオの言葉に、乾いた笑いしか出なかったのはしょうがないよね?ティアだって引き攣ってたし。
けど、あれって忍び込んでたんだ……
堂々としてたし気付かなかった…
けど、隊長達だって気にしてないんだし、気にしなくていいんだよね?
大事にして来なくなったら危ない気がするし…主に命が…(その勘は正しい)
「どうしたらもっとパパいっしょにいてくれるかなぁ?」
あ、いけないいけない。意識がどっか飛んでた。
今はヴィヴィオの相談だよね!
けど、どうしたら良いんだろう?
一般人だからだめなら…管理局入ってもらえば良いのかな?
ダメか。入る気無いってヴィヴィオに言ってたみたいだし。
他には、えーと……
「ティア〜〜」
「う〜ん、…………いっそなのはさん達の誰かと結婚しちゃえば一緒に暮らすかしら?」
考え付かなくて視線を向けたら、ティアは「しょうがないわね」と言って、頭を捻って言った。「なのはさん達も嫌がらないだろうし」って。
まあ、なのはさん達が嫌がるとは思えないよね。
見掛けた時だって、あの人と話してるなのはさん達凄く嬉しそうで楽しそうだし。きっと好きなんだと思うし。
「けっこん?ケッコンしたら、パパずっと一緒にいてくれるの?」
「そうだよ。同じ家で一緒に暮らすから」
質問に答えると、ヴィヴィオはパッと顔を輝かせて
「ケッコンってどうしたらできるの!?」
凄く期待した目で訊いてきたから、
───好き同士な人が、婚姻届に必要な事を記入して、役所に届ければ良い───
って教えてあげたんだ。
届けさえ出せば式はしなくても結婚した事にはなるんだし、逆に式を挙げても届けを出さなきゃ結婚してないんだから、大事なのは婚姻届の方だよね。
式は後からでも出来るんだし。今必要なのは一緒に暮らす理由の方だし。
うん。間違ってない。
「その、コンイントドケってどうしたらもらえるの?」
真剣な顔で訊いてきたヴィヴィオは、やっぱりパパと一緒に暮らしたいんだって分かる。
提出するのは役所だけど、婚姻届だけなら通信で紙に印刷できるから直ぐに手に入る。
だから、あたしとティアはヴィヴィオと一緒にオフィスに行って印刷してあげたんだ。
ヴィヴィオは凄く喜んでたし、これが切欠でなのはさん達が幸せになったら嬉しいかな、って思ったんだ。
それはティアも一緒だったみたいで、お礼を言って走って行ったヴィヴィオを見送るティアの顔も嬉しそうに笑ってたんだ。
・
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それがなんで、こうなったんだろう?
「ねえ、ティア…」
首だけ動かすなんて事も出来ずに、見えないけど隣にいるだろうティアに話しかける。
「な…に…?」
擦れた返事が聞こえた。
あ、やっぱり隣にいたんだ。良かった…
「なんで……こうなったんだろ?」
あの日は夜に突然呼び出されて(アレは連行と言った方が良かったかもだけど…)
「俺はロリコンでも幼女趣味でもない!相手にするのは成人女性だけだ!!」
ってボコボコにされて……
「(魔法使えないって事になってるんならあんなにガンガン使わないで下さい……シールドだって張った端から壊されて、挙句貫通して吹っ飛ばされるってどんな魔法ですか…?)」←とある少女の心の愚痴抜粋
昨日は1日医務室で、「半日休みで良かった」って思ってたらアレだし……… 泣いても良いよね?もう涙出てるけど………
「…なのはさんたち・・だと思って……年齢、きちんと言わなかったから、でしょ…」
搾り出すように答えてくれたティアの声が、鼻声に聞こえたのは気のせいかな?あたしが泣いてるからそう聞こえたのかな?
うん、そうだね、ティア
あたし達はあの時、なのはさん達が結婚するのを前提として話してたんだよね。
ヴィヴィオもそのつもりだと思ってたんだよね。
だから、考えもしなかったんだ………
ヴィヴィオが「自分が」結婚しようと思ってただなんて
………本当に、思いもしなかったんだ………
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