短編小説
再会 4.6
本当は会いたかったけど、ポッドに入ってるなら無理だっていうのは分かる。けど、納得できなくて、わたし達はローズに頼み込んだ。
「画面越しで良いから会いたい」
って、聞いてくれるまで退かないつもりで。
ううん。つもりじゃない。聞いてもらえるまで絶対退かない。
だって、身体強化しないと話も出来ないなんて、そんなに弱ってたヒューが本当に無事なのか、不安でしょうがなくて、また、いなくなっちゃうんじゃないかと恐くて我慢できなくなったから。
それはわたしだけじゃなかったみたいで、はやてちゃんとフェイトちゃんと(こっちで)顔を会わせた瞬間、わたし達は互いの目的が同じだってなぜか分かった。
だから、ここにはわたし達3人が揃ってて、わたし達は諦めずにローズに頼み続けてる。
それに……
あの時は色々動転してて、「髪が白くて瞳が赤かった」しかヒューについて覚えてなくて、顔もキチンと分からないなんて嫌なの………(これも、はやてちゃんとフェイトちゃんと一緒なのかな?けど、訊けないよね?なのはだけだったら恥ずかしいし……呆れられたくない)
◇
[もう、しょうがないわね]
数時間に及ぶ交渉(というか懇願?)の結果、折れたのはローズだった。
だが、これはローズの優しさだと3人は知っている。
こう言っては難だが、機械であるローズはこうしてなのは達と話している間にも幾つもの事をこなせるし現実にこなしている。話しているのが邪魔になるという事も行動が制限されるという事もないし、食事や睡眠等の生理的問題も起こらない。
だから、折れたのは純粋にローズの優しさと好意だ。
それを理解している3人は
「「「ありがとうローズ!」」」
声を揃えて礼を言った。
まあ、意識的に揃えたのではないあたりが彼女達の仲の良さを表しているのだろう。
ゆらゆらと揺れている白い髪
こけた頬と白い肌
微笑しているかのような穏やかな、顔
空間に映し出されたその映像に
「「「っ!」」」
3人は息を呑んだ。
◇
「な、なあローズ。なんや、頬こけとらん?」
暫くの間(ほんの45分ほどです。ほんの)微動だにせず画面を見ていた3人の中で、最初に動いた(言葉を発した)のははやてだった。
[そうね。けどこれでもマシになったのよ?]
「これで?」
[ええ。スカスカな骨とかボロボロな内臓とか未発達な筋肉とかに栄養いくから、殆ど脂肪にまわらないのよ。けど最初に比べれば肉付いたのよ?]
そうして隣に展開された映像には、骨と皮と言うよりもはやミイラというような上半身が映っていた。
[これがポッドに入った時。今とは比べ物にならないでしょ?]
あまりに酷い状態と、それが自分達の大事な相手であった事に、3人は言葉も無く呆然としている。
「いま、いわれても・・」「・・かおしか・・」「・・わからないよ・・・」
いや、並んだ2つの映像を見ながら、搾り出すように言葉を紡いだ。……だたし、5分ほど経っていたが。それだけショックが大きかったのだろう。
[それもそうね]
ローズの同意と同時に、顔だけだった映像が替わる。
痩せ細っているし、それだけ見れば「骨と皮」と言いたくなるが隣と比べれば少しだけ、それでも確かに肉付きは良くなっている、ミイラではない確かに生きていると分かる男性の上半身が。
それ単体で見ていたら不安と心配で一杯になっただろう映像は、隣の(お亡くなりになっているかと見間違う)映像のお陰が彼女達を安心させるに足る力を持っていた。
「ねえ、今のほう、管が何本も刺さってるように見えるんだけど…」
[点滴よ。中の溶液だけじゃ足りないから、血管からも色々入れてるの]
不安を煽るだけの映像(=ミイラ)から目を逸らし現在の様子をジッと見つめていたフェイトがおずおずと開いた口は、ローズによってあっさりと肯定された。
「ちゃんと、生きてるんだよね?」
[当然よ。私の腕を疑うの?それとも私への挑戦かしら?]
「「「ごめんなさい」」」
ローズの言葉が終わると同時に並んだ三つの頭。言うまでもないだろうが、土下座したなのは・はやて・フェイトの3人だ。
だって3人ともローズの恐さは知っている。正面からならローズの手段は手足である自動機械だから(戦艦も操るから厳しいけど)対抗は出来るが、ローズの本領とも言える頭脳戦(=裏から本当に色々と手を回す。下手するとデバイスのAIに細工される)では手も足も出ないのは理解しているのだ。高確率で死ぬ任務をランク改竄してなのは達に回すなんて朝飯前なのだ。そうじゃなくても、バリアジャケットを着たら十二単になっていて(重さも何故かバッチリだった)そのまま倒れるなんて2度と経験したくは無い。
つまり3人にとってローズは“絶対敵にしてはいけない相手”の上位に入っているのだ。
だから3人は一糸乱れぬ動きで即座に土下座していた。
──「プライド?バリアジャケット(騎士甲冑)が突然メイド服やビキニになっらどうするの?」
──「(レイジングハート)(バルディッシュ)(シュベルトクロイツ)が(竹箒)(竹槍)(孫の手)(爪楊枝)になるなんてもう嫌だよ」
──「さすがに、ホンマの命がけで笑い取る気は無いんよ。十二単と爪楊枝なんて死ぬかと思ったわ」
(とある3人の見解抜粋)
[さ、もう気も済んだでしょう?そろそろ夕飯だから戻りなさい]
ローズの許しを貰いホッとした3人は、そう言われるまでずっと目の前に浮かぶ映像(ミイラじゃなく現在の方)を眺めていた。
実はローズに言われた時も「もうちょっと」と渋ったのだが[桃子に「3人があなたの料理なんて食べたくないって言ってるわよ」って言って良いのかしら?]と言われ慌てて戻ったのは………3人らしい行動かな?
その日、満面笑顔で上機嫌の3人娘に首を捻った者達(高町家とかヴォルケンリッターとか)が見られた。
翌日から、なのは・はやて・フェイトの3人はすぐに姿を消しつかまらなくなった。
「ローズ!」
[あら、今日も?]
「うん!」
[毎日何度も、良く厭きないわね]
「なんで?嬉しいよ?」
[私みたいに数値で見てる訳じゃない貴女達には、
数時間じゃ変化なんて無いでしょう?]
「ちゃんと生きてるの見るだけで安心するの!」
[はいはい。見るのはいいけど、自分達の用事もきちんとするのよ]
「は〜い!」
うん。理由(どこかへ日参)は言うまでもないね。
・
・
・
「……こんな顔だったんだ……」
「「…うん…」」
ポツリともれた呟きに返事(しかも肯定)が返され、
「「「え?」」」
とある少女達が顔を見合わせた。
互いの表情から聞き間違いなどではない事を悟り
「「「なのは(ちゃん)はやて(ちゃん)フェイト(ちゃん)も顔覚えてなかったの!?」」」
驚愕に叫んだのは………彼女達だけの秘密だ。(実はローズも知ってるけど…)
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