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短編小説
再会 1
とある休日、の朝。


ピンポーン


来訪者を告げる音に住人達は首を傾げた。

その日誰かが訪れるという予定は無いし、当然家族の誰からもそんな話は聞いていない。

では誰かの友達が、というには


  A.M.8:00


時間が早過ぎるだろう。
この時間に訪れるなら前もって言っておくか連絡を入れるのが常識だ。


ピンポーン


だが、再び鳴ったチャイムに


「はいはーい」


美由希が駆け出した。
恭也もその後ろを歩いて追うが、何故に木刀を持ったままなのか訊いてもよろしいでしょうか?





「朝早くにすみません。この時間なら皆さんいると思いまして」

「ご、ごていねいにどうも」


ドアを開けた途端そこにいた人物に頭を下げられ、美由希は慌てながらも返事をする事は出来た。

何故そこまで美由希が慌てたかと言えば、


「な、なのはのお友達、にしてはちょっと小さいかな?」


そこに立っているのが10歳前後の少年だったからだ。


「約束は果たしましたよ。美由希さん」

「へ? なんでなまえしって」


少年の言葉に更に混乱をきたす美由希。まあ、仕方がないと思うが。


「知り合いか・・・・・・・・・美由希、恋人を紹介してくれるのは有難いが、もう少し年齢を「違う!!」む、違うのか」


駆けた者と歩いた者の差が埋まり追いついた恭也の言葉を即座に否定する美由希。人格を問われかねないのだから当然である。


「では、君は誰だ?」

「ラジェム・カーザリアといいます」

「カーザリアくん「ラジェムで良いですよ」ではラジェムくん。常識的ではない時間に訪れた理由は何だ?」

「この時間なら皆さんいると思いまして。生活習慣が変わっていない限り起きているでしょうし」


「なぜ我が家の生活習慣を君が知っている」


子供という事で殺気は放っていないが、一気に眼光を鋭くする恭也。持ってきていた木刀をさりげなく背に回しグッと握り直している。


「朝っぱらから玄関で物騒な気を放つんじゃない」


そこに割り込んだのは大黒柱、高町士郎だ。
その後ろには桃子やなのはの姿も見える。どうやら、戻ってこない美由希と恭也を心配+来訪者への好奇心でやって来たようだ。


「それで君は誰だい?」

「ラジェム・カーザリアといいます。ラジェムで良いですよ」

「ではラジェム君、用件を訊いてもいいかね?」

「約束を果たしに。というか、高町家の皆さんに関してはもう果たしたのでお暇しても良いんですけど」

「「「「「約束?」」」」」


首を傾げる一同に構わず、


「こちらの用件は終わりましたので失礼します。このような時間に申し訳ありませんでした」


ラジェムはペコリと頭を下げ踵を返した。


「待ちた「待って!」


引き留めようとした士郎を遮り声を上げたのはなのはだ。


「なんでしょう?」

「貴方魔導師でしょう?何をしにこの世界に来たの?」


振り返ったラジェムに真剣な顔で問い掛けるなのは。その場には家族もいるせいだろう、握られた手の中には待機状態のレイジングハートがある事から見てもかなり警戒しているのがわかる。

まあ、“とある理由”からなのはは家族の安否に人一倍敏感になっているからなのだが・・・・・・


「?言いましたよ。約束を果たしに来た、と。そして皆さんとの約束は果たしたので次に行くんですが」

「その約束ってなに?」


心当たりが無いのは自分だけでない事は家族の顔を見れば分かる。
だからこそなのはは警戒しているのだ。


「“あなた方に会いに来る” 果たしたので他の人達に会いに行きます」


アッサリとした言葉。だがなのはにはこんな少年と約束を交わした覚えはない。

その上


「何か分からないけどずっと魔法使ってるけど、皆になにしたの」


ずっと感じられる魔力と魔法を使っている感覚に、家族に何かされたのではないかと不安なのだ。


「皆さんには何もしていません。使っているのは身体強化です。ちょっと体が弱いので、使わないと歩くのも一苦労なんです」

「証明出来る?」

「魔法を解けと?倒れるので却下です」

「介抱ならするよ」

「その様な迷惑を掛ける気はありませんし、他人に自由にさせる状況に陥るのは不快などというモノでは無いのでお断りします。
 そんなに心配なら、僕が行った後にシャマルにでも診て貰えば良いじゃないですか」


突然出て来た第三者の名前。
だが確かに挙げられた名を持つ女性は治療が出来るし、現在医務局勤務だ。

が、その言葉はなのはの少年への警戒を強めるモノでしかなかった。“個人情報は持っている”と言われたに等しいのだから。

なのはは家族が強い事を知っている(桃子の強さはちょっと種類が違うが)。だが、魔法に対抗出来るかといえば不安がある。
だからこそ、この少年がずっと魔法を使っているのが不安でしょうがないなのだ。精神操作系だったら完全に門外漢であるから尚更だ。


「時空管理局まで同行して貰います」


不安を煽られたなのはは強い口調で告げる。


管理局に入ったのか・・・断る。管理局と関わるつもりは無い」


なのはには最初の呟きは聞こえなかったが、否定はしっかりと聞こえた。聞こえなかった呟きの時見せた悲しそうな顔は少しだけ気になったが、それでも不安の方が大きいなのははまずは結界を展開しなければとレイジングハートを握る手に力を込める。


[master]


だが、レイジングハートの声に大きな魔力(それも見知った)が近づいてくるのに気付き、不安が薄れていく。


「・・・・・・ああ、あの子達も来たのか・・・・・・」


そしてラジェムもフイと上空を見上げて呟いていた。



「「なのは(ちゃん)!!」」


ほぼ同時に到着した親友達の(何処か鬼気迫る)様子に、なのはは目を見開き無意識に後退っていた。


ガシガシッ


そんななのはに気付く気配もなく、余程急いできたのだろう、息を切らしている2人の少女はなのはの肩を掴んだ。
捕まれた少女の顔が引き攣っていても、腰が引けていても、決して少女の恥で無いだろう。


「ふ、ふたりともどうs「「ショウ(アンちゃん)はどこ(や)!!」」


なのはの言葉は2人の少女の叫びで遮られた。が、


「にゃ?ヒューってどういうこと!?


聞き逃せない言葉にガシリと自分に迫る2人の肩を掴んで叫んだ。


「おやおや、やはり気付かれなんだようじゃの」
「仕方がないだろう。むしろ当然だ」

「お爺ちゃん」
「「ラディア」」


聞こえた声に、3人の少女はそれぞれ馴染み深い相手の名を呼ぶ。


「やはりかい」

「おや、気付いたのかの?」


そして士郎の溜息と共に吐き出された言葉に、フェイトに「お爺ちゃん」と呼ばれた相手は楽しそうに問い掛ける。


「最初に会った頃と似てますから」


僅かに眉を寄せて、それでも嬉しそうに、懐かしそうに答えたのは桃子だった。


そんな大人達に「どういう事?」という視線が集まる。


が、


「フューグ、無理し過ぎですよ」


士郎と桃子が答える前にシセルが回答とも言える言葉を発し、ラジェムを抱え上げた。


「会いに来て情けない姿を晒すわけにはいかない」

「分かりますけど、無理し過ぎるのはいけませんよ。きちんと説明もしていなかったようですし」

「行かなければいけない所が多かったんだ。時間は掛けられない」

「説明しなければ分かりませんよ」

「それでも約束は果たせる。説明は時間を置いてからでも出来る」


交わされるラジェムとシセルの会話。
大多数には訳が分からないが、士郎と桃子には分かったようで苦笑している。


「ふ、ふゅーぐって・・・」
「もしかして・・・」
「・・・・・・アンちゃんなんか・・・?・・・」


そして、呆然とシセルを、というかシセルに抱えられたラジェムを見ながらなのは、フェイト、はやてが呟いた。

そんな3人に目を向け、


「久しぶり。なのは、はやて、フェイト。
 僕の名はラジェム・カーザリア。

 前世で 桐原 翔 だった者だ」


アッサリと言ってのけた。




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