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無限者の一時
とある1日
「おはようございます桃子さん」

「おはよう翔君。もうシャワー浴びてきたの?」

「はい。何したらいいですか?」


挨拶をしながら翔は朝食の準備をしている桃子の隣に立つ。


「翔君も士郎さん達みたいに運動してるんでしょ?気を遣わなくても良いのに」

「別に無理してる訳じゃないですから気にしなくて良いですよ。これは胡麻あえですか?胡麻擂りましょうか?」


この家で一番早く起きるのは実は翔である。
翔は朝起きるとジョギングをし、その後庭で(本人曰く)少し体を動かしてシャワーを浴び、桃子と共に朝食の準備をするのだ。

桃子は「子供がそんな気を遣わなくても」と思っているし言いもするのだが翔に流されて終わっている。たまになのはが早く起きた時やぐずった時などは「こっちはやっておきますからなのはちゃんの所に行ってあげて下さい」と台所を追い出され、全面的に翔に任せる事もあるから強く出れないのもあるかもしれないが。


「士郎さん達呼んできますね」


朝食が出来上がる前に翔は道場へ士郎達を呼びに行く。彼等がシャワーを浴びる時間も考えて呼びに行く当りソツがないと桃子は思っている。

朝食が終わり恭也と美由希が学校へ向かうと朝食の片づけだ。「桃子さんはなのはちゃんの相手と(お店に行く)準備して下さい」と言われやはり台所を追い出される。反論しようとすると「なのはちゃんと接する時間少ないんですから、忘れられてもしりませんよ?」と言われるがそれで引く桃子ではない。


「なのははわたしを忘れたりしないわよ」

「そうですね。けど、このままだと帰って来た時士郎さんを先に呼ぶようになるんじゃないですか?」


横を見ると誰もいない。
既になのはの元に行っているのだ。


「士郎さん・・・」


そんな夫の行動に肩を落とすも桃子は駆け出した。折角の一番最初に呼ばれてからの地位を夫とはいえ渡すのは嫌だったから。


「それじゃあ行ってきます」
「行ってくるよ」

「はい。行ってらっしゃい」
「しゃい」


桃子と士郎は翔となのはに見送られ翠屋へと向かう。


「さて、なのはちゃんの好きな番組見よっか?」

「はい!」


翔の問いに元気良く手を上げて抱っこをねだるなのはを抱き上げ、翔は居間へと向かう。

暫く一緒にテレビを見て、なのはが熱中し出すと抜けだし洗濯物を洗濯機の中に。


「む〜〜〜・・・」


翔がいなくなっていた事に頬を膨らますなのはを抱き上げ


「なのはちゃん、お洗濯物干したらお散歩行こうか?」

「う〜 いっしょ?」

「もちろん。帰りにちょっとだけお買い物するけど良い?」

「いっしょならいい」


提案をして機嫌を直して貰う。


「お洗濯が終わるまでどうしようか?もう少しテレビ見る?」

「お話しして!」


テレビを見るなら掃除もしてしまおうかな?と思っての提案になのはは乗らなかった。


「どんなお話しが良い?」

「おおかみさんと仲良くなるの!」

「いいよ。
 ある所に森の中で自然と一緒に暮らしている人達がいました。
 その人達は自分達だけでは森の中では弱い生き物だという事を知っていたので、乱暴者じゃない優しい森の生き物と仲良くなって生活していました・・・」


翔が話す話は翔が過去に生まれ、生きていた場所。
翔はそんな色々な世界の事をなのはに御伽話のようにして語っていた。血なまぐさい話の方が多いので、穏やかでしかも分かりやすいものを探して簡単な言葉で話すのにちょっとだけ苦労していたが・・・
物によっては自分の死後でどうなったか分からないものも結構あるし。


「ん?寝ちゃったか」


眠ったなのはを起こさないように寝かせると翔はその場を離れ、洗い上がった洗濯物を持って庭へ向かう。


洗濯物を干し終わるとなのはの様子を見る。その寝顔に(まるで子を見る親のような)微笑みを浮かべると冷蔵庫の中の物をチェックして昼と夜、翌朝とお弁当の献立を考えつつ足りない物を書き出していく。

なのはが起きていないのを確認すると各部屋を回り枕やクッションを持ってきて窓辺に並べ陽に当てる。
日によってはここで掃除機を持ち各部屋を掃除するが、今日は半袖短パンに着替え風呂場に向かう。もちろん掃除だ。


「ひゅー」


なのはの声が聞こえると掃除の途中で切り上げ、手足を拭きつつ居間に向かう。


「ひゅー!」

「おはようなのはちゃん」


飛びついてきたなのはを抱き上げ顔を合わせて言葉を交わす。


「もう眠くない?」

「うん ・・・・・・ひとり、や」

「うん。ごめんね」


ギュッとしがみつくなのはを抱きしめ落ち着くまで背を撫でる。


「あれ?」

「すー」


覗き込んだなのはは翔の服を握りしめたまま再び眠っている。


「んー しょうがないか」


苦笑するとシセルを喚びやりかけの風呂掃除を頼み、なのはを抱きしめたまま横になる。


「悪いけど、昼食作る頃になっても寝てたら起こして」


シセルにそう頼んで。




シセルに起こされる前に目を覚ました翔となのはは


「約束通りお散歩行こうか?」

「うん!」


手を繋いで一緒に家を出た。もちろん、翔は着替えてからだ。


公園に行き滑り台やブランコ、砂場で翔も一緒に遊ぶ。ただしブランコの場合翔がなのはの背中を押します。
暫く遊んでいてなのはが疲れたらベンチや木陰に座って休む。


「おなかすいた」

「それじゃ、あそこでたいやき買おうか?」


当然抜かりはなく持ってきていた水筒のジュース(翔製の野菜ジュース。果物が多く控え目だが甘味もあるので小さな子でも抵抗無く飲めます)を飲みながらのなのはの言葉に屋台を指差しながら翔が提案する。


「いーの?ごはんは?」

「お昼御飯出来るまで時間掛かるから。その代わり僕と半分コしよう?」

「うん!」


承諾したなのはを連れ屋台へ行く翔。豊富な種類からはなのはに選んで貰う。

食べ終わると公園を後にし、スーパーで買い物をして帰る。帰りには袋を片手で持ち、反対の手はなのはと繋いでいるのは既に当然だ。




昼食が済むと先程まで遊んでいたのもあり眠くなったなのはは、それでも起きていようと目を擦る。


「眠いならお昼寝しようか」

「やー」


首を振りつつ洗い物をしている翔のズボンを握る。


「んー それじゃ」


翔が一瞥した幾つかのクッションが飛んできて翔の足下に落ちる。寝やすそうな形になって。


「終わるまでそこで待っててくれる?勝手にいなくなったりしないし、終わったら僕も一緒に寝るから」

「・・・やくそく?」

「うん。約束する」


翔の肯定に嬉しそうにクッションの上に座るなのは。待っている間に眠ってしまい起こしていた上体が倒れるが、翔がクッションを操作して受け止めたので何の問題もない。

洗い物が終わるとなのはを抱え居間へ移動。なのはをソファに寝かせると引き出しから目覚まし時計を取り出し(居間で昼寝は良くあるので、数回目からそこへ置いている)時間をセットするとなのはを抱きしめ眠りにつく。


「ぅにゃ・・・・・・ひゅー・・・?」

「おはよう。なのはちゃん」


3時頃、目を覚ましたなのはと起き上がり一緒に物干し場に出る。


「気をつけてね?」
「うん!」


靴下やタオルなどの小さな物をなのはに渡し、なのはがそれをベランダまで運ぶ。その間にシャツなどは洗濯籠に入れていく。
取り込み終わると一緒に洗濯物を畳みそれぞれの部屋へ置きに行く。


「ありがとうなのはちゃん。おやつ食べよっか?」

「る!」


一緒におやつを食べると翔は後片づけ、なのはは「これお願い」とコップとタオルを渡され一所懸命に拭いている。コップ一つを任せている間に残りを終わらせてしまう当り手慣れている。

終わると落書き帳とクレヨンを持ってきてお絵かきしたり庭を散歩したり、なのは“に”絵本を読んで貰ったりして時間を過ごす。


「なのはちゃん。これね」

「はい!」


沢山の料理の写真だけが入ったポケットアルバムを真剣な顔で受け取るなのは。

「ひゅー、これなにはいってるの?」

写真を指して質問をしつつ真剣に写真を見ている。
これはなのはの大事なお仕事だからだ。
まあ、簡単に言うと明日の夜の献立決めである。本に載っているようなものからかつて作った物まで、様々な写真を渡しなのはに決めて貰うのだ。
その間に翔は夕食の準備を始める。


美由希や恭也が帰ってくると少しだけなのはの相手を任せたりしつつ、時計を見ながら夕食を作っていく。
途中、なのはが翌日の夕食を決めるとその写真をアルバムから外し冷蔵庫に貼り付け、前日に貼った物をアルバムに戻す。写真の裏にはその料理のレシピが書いてあるから調べる必要もない。

そうしている内に士郎と桃子が帰ってきて、なのはの相手は2人に移行する。翔の手伝いを桃子がする事もあるが・・・


全員で揃って夕食を食べた後、翔は後片づけと翌日のお弁当の下拵え。台所を追い出されて桃子がやる事もあれば、逆に桃子が追い出される事もある。
その間に追い出された方はなのはとお風呂に入り、目を擦りつつなのはにズボンを捕まれた翔が一緒に布団に入り就寝。士郎や桃子がなのはと寝るのと半々である。




こうして翔の「お前主婦だろ」という1日が終わり、また始まる。

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あきゅろす。
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