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モノクロなる恋模様
二話:サボり魔じゃねぇよ不良だよ


ザクッザクッ、と、草木が生い茂る道の中を、暇潰しとして歩いていた。土、草、砂利。それぞれの特有な臭いや感触、色が、俺の五感を支配している。もともと自然というものは嫌いじゃない。都会育ちな分意外かと思われるかも知れねーけど、そこいらの腐った人間どもとは違って、純粋で率直に綺麗なものだから嫌いじゃない。
…なんか不良っぽくはねーよな。


しばらく進んでいると、急に森のような道が開けて、少し大きめな庭のような場所が現れる。中央に円形の大理石の石畳が敷かれていて、その上には屋根のようなものが立っていて、生徒たちの休憩スペースなのが伺い知れる。俺もこの学校の一生徒だ、休む権利くらいはあるだろう。いくら授業にサボっているからとはいえ。
少し夏を思わせるようなやや暑い日に、ひんやりした大理石に座り、その恩恵を受けたくて、またザクッザクッ、と歩きだした。

「…ふぅ…」

台座に座れば、下半身から心地いい冷たさが伝わってきて、思わず声が漏れた。心配しなくても他の生徒はみんな授業中であるから、会うことはほぼないのだが、それでも誰かに会うのは嫌だから、注意を払っている。
腰かけたまま、ゆっくりと後ろに倒れ込む。腰から背中、肩、頭と、徐々に冷やされていった。本当に気持ちがいい。こんな日は一日中寝転がるのに尽きる…一応俺は不良だからな?嘗めんじゃねーよ。

虫の声より、風が吹く音の方が今のところ強い。って言ってもそよ風程度のものだ。それも心地いい。ヒュ…、という儚い風の音が鼓膜を振動させ、脳へと伝わった。今は何も考えられない、考えたくない。硬派な大理石の天井を見ながら、そう思った。





目が覚めれば、すっかり夕方になっていた。訪れたのは午前だってのに、ずいぶん長く寝てしまった。疲れてるわけでもないのに、余程心地良かったんだろう。
むくりと起き上がり周りを見渡すが、誰もいないことが確認できた。まぁ勿論、俺が誰かの気配を察せないわけないけど、誰も来ていないのは分かっている。
左手を見れば、午後4時半近く。今頃部活動生たちが頑張り始め、帰宅部はガヤガヤと帰り仕度をするのだろう。教室にいったことすらないのだから詳しくは分からない。だが行く気も起こらない。俺はテストの日がいつかだけ知らせてくれればそれでいい。前日の夜にペラペラっと教科書を捲り、ぶつぶつ呟いてから寝れば、赤点は免れる。実際受験もそんな感じで勉強してたら余裕で合格できたから、俺はあくまでこのスタイルを貫く。
えらく緩慢な動作で、大理石の石畳から腰を持ち上げた。冷たい感触は未だに健在で、少し名残惜しかったのだが、そろそろ帰寮の時間だ。まぁ別に決まってはねーけど、この時間が一番、誰にも会わないで済む。あと一時間程で入寮している部活動生が帰ってきちまうからな。
数時間前にも聞いた、ザクッザクッ、とした音を鳴らし、静かな夕焼けにこだまさせた。


ここまでの行動なら、俺はただのサボり魔だ。授業サボって居眠りしてるだけなんだから。だが、ここからが普通のサボり魔とは違う。

しばらく寮に向かって足を進めていると、前から柄の悪い、やたら体格のいい男集団が歩いてきた。今日は少し遅い。昨日は三十分前に来ていた。

「よぉ…昨日はよくもやってくれたな…お陰で仲間二人が骨折したぜ?」

ここで俺の初台詞。

「ぁあ゛?テメェラが突っかかってきたらヤり返しただけだろーがァ。一人じゃ戦えねぇザコが、腕何本折ろうが関係ねぇな」

わざわざ挑発するようなことを言うのは、頭に血が登った奴ほど喧嘩が弱くなるからだ。後は、早く終わらせて帰りたいのもあるが。
案の定、


「ああ゛ッ!?テメェいい加減にしろやオラァ!」

なんて典型的な脅し文句と共に、リーダー格っぽいのが殴りかかってきた。単調な攻撃。だから頭に血が上りやすい奴の方が倒すのが楽だ。
少し体を捻るだけで、簡単にかわして、左手をポケットに入れたまま、右手で頭を掴み、腹に右膝を打ち込んだ。
ぐッ、とだいぶ堪えたような声が聞こえ、掴んでいた頭を離すと、ドサッと地面に倒れ込んだ。鳩尾への一撃が決まって、立ってられたらすごい方だ。
チラリと前を向けば、まだ2、30人くらいの集団が健在だ。顎を少し持ち上げて、バカにしたような笑みを浮かべる。実際バカにしてるが。


「どうしたテメェら、怖くて動けねぇか?チワワどもが」

するとやはり案の定、血相変えて同時に飛びかかって来やがった。
俺はニヤリ、と笑って、拳に力を込めた。




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