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モノクロなる恋模様
十五話:終点


「オイ…、起きろ」


声がして、意識が覚醒した。見れば、藍人が座っていて、俺の隣にいる。
ん…?
なんで藍人がここに?

藍人はここ、分からないはずなのに。もしかして俺死んだか?しんで幻覚見てんだろ、きっと。

「わけがわかんねぇ、みてぇな顔してんな、お前は。いい加減起きろ、殺すぞ」

あ、いつもの藍人の言葉だ。ちょっと安心。

でも俺は死んだはず。
起きろってことは、生き返れるのか?
藍人スゲェ…
へへ、へ、ヘヘヘっ

いだぁああ!


「何笑ってやがる」

「ぅ…痛いよ、藍人さん」

「冗談言う元気はあんじゃねぇか」

「いくらなんでも散々蹴られた腹に追撃とか…鬼畜」

「わりぃ全然知らなかった」

「嘘つくのと気持ち悪いしゃべり方やめて」


アァ"?
って言った藍人に安心した。なんか藍人、今日上機嫌みたい。なんでだろうね〜。



「それより、何があったの?何で気づいたの?」

「テメェに教える気はねぇ」

「え〜?いいじゃん、教えてって。あ、流石にこの不良の残骸たちは藍人がやったのはわかるけど」

「チッ…メンドクセェ」

「早く早く!」

「ハァ…。実は…



ということだ」


「ねぇ、長話したような雰囲気だけ出すのやめてよw」

やっぱり藍人はおかしい。ボケを連発してくるし。本人も仏頂面を決め込んでるけど、口角が上がりかけてる。なんなんだろ、ホントに。

それから長時間かけて、少しずつ話を引き出していった。お腹痛いけど、藍人がまた抱き締めてくれた。幸せだった。

ちゃんと話を引き出し終わってから、風紀委員の先輩に連絡しておいた。もう日が落ちていて、まもなく夜になる。なんか色んなことがあったなぁって。思い返してみて、しばらくして寝ちゃった。その後藍人が運んでくれたのかな?






※視点が変わります
(藍人side)

俺は、頭の中で考えをまとめたあと、不良どもを探しにいった。目的地に目処はついていた。あいつらがよくたむろっていた場所。第2体育館裏のもう使われていない倉庫だ。ただ距離がだいぶあるので、時間はかかるだろう。

何故、何故俺がアイツのために走っているのかはわからなかった。理屈より、衝動で体が動いているのだ。なんとなく、助けなくてはという気持ちが心には確かに存在していて、その気持ちに従順に動いているだけだ。
俺を目的で襲ってきた不良ども。そんな不良どもに連れてかれたアイツが、可哀想とかそんなんじゃなくて、俺のためにアイツが人質になるのが気にくわない。やるなら俺とちゃんと戦え。

…いつからこんな正義のヒーローみたいなことを言うようになったのだろうか。

あぁ、むしゃくしゃしてきた。


足の回転を速くして、さらにスピードを上げた。



「………」

全力疾走をしたのに、あんまり疲れていない。そのことが、俺自身に嫌悪感を与えた。この非凡な才能が嫌でグレたのに。

ギッ…と怪しげな音がする扉を開いて倉庫の中に入れば、声が響いていて。


『オラァ!』


『ケッ…なかなか堕ちねぇな』


『まぁ、あと数発で肋骨が折れる。気にするな』

その言葉を聞いた途端、俺の中に激しい怒りが沸き起こって。久しぶりだ、こんなに怒ったのは。一度、息を吐き出して、前を向いて。
体の力を抜いて、歩き出した。


『んだテメ…』

向かってくるクズどもを瞬殺していく。喋らせるか、喋らせる価値もない。
また一人、金属の棒で殴りかかってきた。かわさずに、片手で受け止める。当然、受け止めきれないなんてことはなくて、掴んだままこっちに引き寄せて、顔面を強打しておいた。今の音、鼻が折れたようだ。ザマァミロ。

奥に入っていけば、アイツが、二人の男に蹴られたり顔を近づけられたりを繰り返していた。
何してんだ…?


『っよし、もう堕ちるだろ!』

『ヘヘ、ザマァみやがれ』

とにかく、蹴られてるならどうにかしなければ。どうも同じところを繰り返し蹴られているようで、下手すれば骨が砕けるだろう。
素早く、かつ気配を殺しながら、ソイツら二人の後ろにまわった。案の定こっちに気づいてない。どうしてやろうか。

『オイ…テメェら…死ぬ覚悟はできてんだろうなァ…』

低い声で囁くと、二人の体がビクッと跳ねて、こっちを見た。俺の登場に驚いてんのか情けねぇ。死ぬ覚悟は、とは言ったが、実際は骨の五、六本折ることにする。それくらいに怒っていたのだ、俺は。

不良二人は、俺を見て身構えた。この人数で俺に勝とうとしてんのか?と思いきや、オイ!、と仲間を呼んでいて。

『…結局一人じゃ戦えねぇんだな、チキンども。殺してやるからかかってこい』

『な、んだとぉおお!』

こんな台詞吐きながら勝てると思ってるコイツが馬鹿だ。振りかぶってきた拳を軽くかわして、腹に一発打ち込んでおいた。たった一回で血を吐いてやがる。つまらねぇ、ともう一度腹に膝蹴りをすると、意識を飛ばして気絶した。もう一人も似たようなもので、あっという間に終わった。

いつもこれだ。

全員気絶させた後の虚無感。静寂。

それが本当に嫌になる。なんのために俺は喧嘩したのか。
いつもいつも分からなくなる。


しかし、今回は違う。


チラリと気絶しているとおるを見た。




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