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モノクロなる恋模様
一話:成り行き

俺が小学一年生のとき。


我が家は実に平和だった。平和、というか、俺の家族は平凡だった。
だから何の事件も起こらず、一般企業のそこそこの地位にいた親父と、専業主婦として日々家事に勤しむお袋、少しばかりやんちゃ坊主だったけど、とにかく元気がよかった俺の三人で、ありきたりかつつまらなさそうな人生を送っていた。
とにかく平凡だった。
普通だった。





小学四年生のとき。




親父が出ていった。

簡単に言えば、どこぞの女と駆け落ちした。
浮気がお袋にバレたのは、携帯を放置したままお袋に見られた、というこれまたいかにも平凡な理由だった。
両親、そして知らない女の三人で繰り広げられる昼ドラのようにドロドロした展開をよそに、俺は何も知らされずにのんきに友達と外を走り回っていた。だから、親父が出ていったのは突然で、理由も詳しく教えてくれなかったから、その日の夜は号泣して、久々にお袋の腕の中で寝た。
ここでも思う。明らかに凡人だ。





そして中学に入って3ヶ月ほど経った頃。

今まで一人で奮闘し、小さい俺を三年育ててきたお袋が、肺癌で死亡。お袋は夜の店で働いていらしいが、周りに喫煙者がうようよ居て、副流煙を大量に吸い込んだ挙げ句ストレス解消としてヤケ酒をしていたから、あっという間に肺は真っ黒になり、検査も行かずにいると家で倒れてた。俺が学校に行った直後だったから、かなりの時間放置され、すでに手遅れ。病院には行ったが、癌はあり得ないほど進行していて、助からなかった。
これは、平凡とは言えないと思う。




お袋が死んですぐ、お袋の姉さんのとこに預けられたが、既に子供もいて、そいつを溺愛する夫婦だったから、俺は家での居場所は無かった。
目を見るたび、蔑まされたような目を返してくるし、ちょっとしたことですぐ罰を与えられ、中1にはきつい労働作業と時間を強要された。
学校の先生にも相談した。すがるような思いで必死に訴えかければ、うんうん、と優しい瞳で返してくれて、ようやく俺は救われるのだ、と心から安堵したのを覚えている。できるだけ頑張る、と約束されて、期待を込めて待っていたら、何一つ変わらなくて、何度か掛け合おうとはしたが、今は忙しい、と何かと避けられた。ここら辺から、俺の中に暗い闇ができはじめる。
最早凡人と同じ人生ではないだろう。





中2から、俺はグレた。
学校も、家も、無責任な両親にも、偽善者ばかりの世の中にも、全てにうんざりして、どうせ誰からも気にかけられないなら不良にでもなってしまおう、と自暴自棄になっていて、夜の街を徘徊していた。
この頃から、俺自身が凡人じゃなくなった。

グレるちょっと前も、もしかしたら勉強を頑張れば認めてくれるかもと、学年一位をとってみたり、スポーツをやったら認められるか?と考え、サッカー部に入部した。
たちまちエースストライカー。地区止まりだった弱小チームを、全国大会まで引っ張り上げたのは明らかに俺の実力だ。しかし、生徒からは疎まれ、忌み嫌われ、叔母には嫉妬の目を向けられるようになった。

要するに、やれば何でも出来てしまう、ということ。

凡人として普通の生活が送りたかった俺としては、多大なるコンプレックスだった。女子からも人気だったらしいが、その頃俺は会話するのを拒否していて、誰か来るたびにらみつけた。結果、俺に近づくやつは居なくなり、教師からは不良扱いを受けた。

そんな非凡な俺が夜の街に出たら、たまたま絡まれた不良と人生初の喧嘩で圧勝し、喧嘩もできるのだと落胆した。
それからは毎日のように不良と喧嘩三昧。めきめき強くなっていった俺はたちまち街のトップとなり、突っかかってきたら締め上げて、舎弟にしろと言われたら無言で立ち去る。そんな毎日を送っていた。
いつしか隣街のやつらまで喧嘩を売りに来て、全て圧勝しながら、俺の活動範囲は拡大。中学が終わる頃には県でトップの座に君臨していた。
一匹狼として動いていた俺には、友達は居なかった。



そして高校。


なんとなく進学を考えていた俺は、第一希望として寮のある学校を探した。理由は当然、あの家から出たかったから。
県内に私立高校で寮のあるトコはかなり見つかったが、どうせならもっと遠いところが良くて、県外まで探したら、エリート学校、桜煌学園高等部を見つけた。
成績さえ良ければ進級できる、という条件は非凡人な俺には魅力的で、行く気になった。全寮制では無いが、少し田舎のほうだから、面倒なことは避けられそうだ。不良に絡まれるとか。



そんな無茶苦茶な人生を送ってきた俺は、またもや無茶苦茶な人生に足を踏み出すべく、男子校の、桜煌学園へと通うことにしたのだ。





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