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どらごんおーぶ
4-1
 養い子ゲンノとパールドラゴンのフウタとその他二人で登録した僕達はゲームを始めた時には養い子ゲンノとその飼い竜フウタとその他二人に変わっていた。ゲンノがフウタを銀貨10枚で買ったからなんだけど。

 そしてゲームに参加するのは僕達他騎竜のインディゴ小父さん組、カーマイン小父さん組(ゲンノに聞いたらこの二人は隣の国の騎竜騎士団同士で好敵手として有名らしい)後は魔術師組が幾つか。厳選というのか竜やら呪術師と競いたくないという人達が全員降りてしまったので、反対に結構ガチ組だけ残ったというのか。

 なんか受付の人達が「来年、何を用意しよう?」とか「ヒザーリ様の作品だと養い子が来てしまう」とか「いや、養い子が来た方が客が呼べないか?」とか。そんな話をしていたのでドラゴンオーブを手放す事に関しては納得しているらしい。そこで納得するというのか、来年の景品のめどが立っているんならそれを先に教えて貰いたいんだけど。と言う気持ちもあるけれど。そうしちゃうと来年の祭りに差し障るんだろうなぁ。

「俺だってそう一々祭りを邪魔しに来たりはしない」

 ゲーム会場が山も含めて。という事だったからさぞや手入れをされていない山だと思っていたら、きちんと手入れをされている里山なのにびっくり。

「そりゃあ、年に一回、何十人もの人間が走り回るんだからそれなりに道も出来るだろう。肉体労働不向きな魔術師もいるんだし」

 そう言ったのは肉体労働にとっても不向きなゲンノだった。完全に疲れ切っている。

「俺は絶対…… フウタを竜に出来たら…… 今すぐにでも乗るぞ……」

 木に手をかけてゲンノが荒い息を上げている。そんなゲンノを眺めている僕達は誰一人として息すら上がっていない。体力なさ過ぎだよな、ゲンノは。

「にゃあ?」

 フウタが疲れ切って動けないゲンノを眺めて首を傾げる。なるほどここまで体力がない人間を見るのは初めてと。

「見た目通りに体力がないんだな」

 カンも座り込んだゲンノを珍しい物を見る目で眺めている。

「ゲンノ、ここで待っている? 僕達だけで探しに行くから」

 僕の言葉にゲンノが手を振ってみせる。声が出せないんだな。

「俺が行かないと…… フウタが…… 狙われる……」

 やっと僕にゲンノが答えるけど本気で疲れ切っている。始まってすぐ。ただ山道を歩いただけなんだけど。
 でも確かにゲンノがいなければフウタが狙われるよねぇ。何せ「銀貨10枚」の価値があるんだから。問題はその価値はゲンノがつけたものだけど。だからゲンノは無理をして歩いているんだろうけれど。

 はっきり言って足を引っ張っている以外の何物でもないけれど。

 「まぁ、ここは素直に漁夫の利を狙って小競り合いが始まったら駆けつけるという……」

 ある意味ものすごく姑息な作戦をゲンノが立てカンがしばらく考える。考えてから僕をみる。見られた僕は肩をすくめる。ゲンノの案に賛成という意味を込めて。

 これでカンが戦士だったり騎士だったりするとそういうのはみっともないとか道に外れるとか、面倒くさい意見が出たりするんだけど何せカンは竜の里とか言うところで竜の世話をする下男だったという立場だし、僕は厄介事解決人の下働きからゲンノ専属護衛戦士になったという武士どーとか騎士どーなんかより、出来るだけ小さなリスクで大きな利益を上げるのが最高の仕事と思っている人間だったりするのでゲンノの意見に思い切り賛成する。

 僕とカンの意見の一致を確認したゲンノがにっこりと微笑むと小さく呪文を唱えながら両手を合わせ何度か小さく拍手をした後大きく手を広げる。その手の間から雀にしか見えない鳥が現れるとそのまま飛び立っていく。

「みゃあぁ」

それが不思議だったのかフウタが目を丸くして声を上げ、カンも鳥の行方を顔まで回して追いかける。

「監視と言うのか盗撮用の覗き見鳥、通称ピーピングトム」

 説明したのは僕だった。ゲンノはこれくらいの魔法だと説明しない。と言うかこれ位小さい魔法だとゲンノは真剣になってしまうので説明している余裕はない。

「これ位トムを飛ばしておけばどれかが引っかかるだろう」

 恐ろしい位神経を集中してピーピングトムを10羽ほど飛ばしたゲンノが大きく溜息をつく。ものすごく集中力をすり減らしたみたいだな。

 こういう小さい魔法で精神力をすり減らす代わりに『何で立っていられるんですかぁ!』と魔術師達に抗議されるほど大きな魔法を使う事はとっても簡単に模倣を使うので、知り合いの魔術師達には「呪術師というのはそういう者なんですねぇ」扱いを受けている。

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あきゅろす。
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