…3。
勿論それは、“家族”だからで、母さんに、会ったから。
何も知らない親を裏切ってる罪悪感は、好きの気持ちと比例して日に日に強くなっていく気がする。
独りの夜に毎日泣いて、それでもケンジへの気持ちは止められなくて。
それに…、
呼んで置いたタクシーに荷物を乗せた。
ふたりで後ろに乗り込んで、走り出した振動に隣に座るケンジに視線を向けると、
「ハァ…」
ついつい出てしまう溜め息に視線を揺らして目を伏せた。
…あの日から、ヨシキに会っていない。
ヨシキにキスされて告られた事も、俺達の関係がバレた事も、勿論ケンジには言えなくて…。
…浮気、になるのかな。
例え、してきたのはあっちからだとしても、キスした事は事実だ。
無意識に唇に手を当て、どうしても考えるのはヨシキの事で。
親友だと思ってた関係が、もう今まで通りには戻れない寂しさで胸の辺りがチクリと痛んだ。
それと同時に、ケンジの隣で他の男の事を考えてる自分も嫌になる。
もう一度喉元まで出掛かった溜め息を飲み込むと、自然と暗くなる気分に下を向いた。
「…そういやさ。」
「?」
「コウジの友達が見舞いにきてくれたよ?」
「!」
驚いて隣を見ると、ケンジが真っ直ぐ俺を見つめてて、
…息が、詰まる。
まるで呼吸を忘れたみたいに、吸ったはずの空気を俺の肺が拒否してるようで息苦しい。
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